「ナブラが出てるのにジグを投げてもルアーを投げても全然釣れない」——青物ジギングを始めたころ、正直この状況が何度もありました。目の前で魚が湧いているのに、自分のジグだけが素通りしていく。あの焦りとくやしさは、いまでも体が覚えてます。
隣で年配のおじさんがブリを釣り上げてるのに、おれのジグには全くアタリがない。同じ海の同じ場所、しかもジグの色まで似てるのに、この差はなんなんだと。リールを巻く手が震えるくらい焦って、とにかく速く巻けば追いつくと思い込んで、汗だくになってしゃくり倒してた。結果はゼロ。海から帰る車の中で、ハンドルを握りながら「なんでだ」とずっと考えてました。
秋の青物シーズンが好きです。
夏のうだるような暑さがすっと抜けて、朝の堤防にひんやりした風が吹きはじめる。あの空気の変わり目に立つと、「そろそろ青物が回ってくるな」と体がそわそわしてくる。イナダ(ブリの若魚)がナブラを立てながら海面を追い回している光景を初めて見たとき、銀色の魚体が朝日にきらっと光って、海面が一瞬だけ沸騰したみたいになって——「これを釣らないと損だ」と思って急いでジグを投げました。心臓がバクバクして、ろくに狙いも定めず投げたのを覚えてます。釣れなかったけど、あの興奮だけで通う理由になる。それくらい秋の海は気持ちが上がる季節です。
秋のブリ・青物の行動
ブリは出世魚で、サイズによって呼び名が変わります:
- イナダ(40cm以下)
- ワラサ(60cm以下)
- ブリ(60cm以上)
地域によって呼び方が異なります(関西ではハマチ・メジロなど)。同じ魚でも釣り場で呼び名が違うので、ベテランと話していて「メジロが入ったぞ」と言われて一瞬きょとんとした、なんてこともよくあります。サイズが上がるほど引きの重さも段違いで、イナダなら抜き上げられても、ワラサ・ブリになると足元の岩でラインをこすられて切られる——というのがおれの体感です。
**秋(9〜11月)**は産卵前の荒食い時期で、イワシ・アジなどの小魚を追って岸近くまで回遊してきます。ショアジギングやトップウォーターで狙いやすい季節です。
なぜこの時期に岸近くまで寄るのか。簡単に言えば、冬に向けて体に脂をためるためにベイト(小魚)を死にものぐるいで食っているからです。イワシの群れが岸際に追い込まれると、それを下から青物が突き上げる。海面でイワシが逃げまどってバシャバシャやってるのがナブラの正体です。つまり「青物を探す」というより「ベイトを探す」のが正解。海鳥が同じ場所に集まってずっと旋回しているなら、その下にはほぼ確実にベイトがいて、青物がついてます。おれは堤防に着いたらまず空を見上げて鳥の動きを確認するクセがつきました。魚探より鳥のほうが正直なことが多い。
ポイントの選び方
ナブラを探す
海面がざわざわして、魚が跳ねたり海鳥が集まっている場所がナブラです。
ナブラが出たら即キャストが鉄則。魚が散る前に投げます。ただし、ここで初心者がやりがちなのが「ナブラのど真ん中に投げ込む」こと。おれも最初はそれをやって、ジグが着水したとたんに群れが沈んで終わり、というのを何度も繰り返しました。ナブラは生き物なので、真上に重いジグを落とすと魚が警戒して散ってしまう。コツはナブラの少し先、進行方向にキャストして、群れの中を通すように引いてくること。逃げるベイトを演出するイメージです。あと、ナブラは数十秒で消えることが多いので、出てから準備していたら間に合わない。だから現場では常にジグを結んだ状態で、いつでも投げられるように待っておく。この「待ち」の構えができるかどうかで、その日の釣果が決まると言ってもいい。
潮の流れを読む
青物は潮目(潮の境界)を好みます。
青緑の潮と濁った潮がぶつかる場所、流れが速くなる岬の先端・堤防先端などが実績高い。なぜ潮目に魚が溜まるかというと、流れがぶつかる境目にはプランクトンやベイトが集まりやすく、それを狙って青物が回遊ルートにしているからです。海面をよく見ると、色の違う水が筋になって境界をつくっているのが分かる日があります。その筋に沿ってジグを通すと、何の変哲もない場所より明らかにアタリが増える。逆に、べたっと一面同じ色で動きのない海は、見た目が穏やかでも魚っ気が薄いことが多い。「キレイな海=釣れる海」ではないというのが、おれが何年か通って腹に落ちたことです。
朝まずめ・夕まずめ
青物の回遊は朝まずめ(日の出前後1時間)と夕まずめ(日没前後1時間)がピークです。
この時間帯に現場にいることが、青物を釣るための一番の条件です。これはテクニック云々の前の話で、どれだけ高い竿を使っても、魚がいない時間に投げていたら釣れません。逆に言えば、安いタックルでも、まずめの時合いにその場に立っているだけで釣れる確率がぐっと上がる。だからおれは秋の青物狙いのときは、暗いうちに家を出て、空が白みはじめる前にはキャストを始められるように動きます。眠い目をこすって早起きするのが正直しんどい日もあるけど、ぼーっと寝坊して着いた頃には鳥もナブラも消えていた、という空振りを何度かやって、ようやく「早起きこそ最大の攻略法」だと割り切れるようになりました。まぁ、楽しけりゃいいよね、とは言いつつ、ここだけは根性論で押し切る部分です。
タックルと仕掛け
ショアジギングタックル
ロッド:ショアジギング専用9〜10フィート、ジグウェイト40〜100g対応
リール:4000〜5000番スピニング、PE2〜3号
リーダー:フロロカーボン7〜10号(60〜80cm)
メタルジグ
40〜80gのメタルジグが基本。水深・潮流によって調整します。重さの選び方で迷ったら、「底が取れる一番軽いジグ」が目安です。重すぎると沈むのは速いけどアクションが鈍くなり、軽すぎると潮に流されて底が分からなくなる。着底の合図(ラインのテンションがふっと抜ける瞬間)が分かる範囲で、できるだけ軽めを選ぶ。これを覚えてから、おれの根掛かりロストも釣果も両方マシになりました。
カラーはブルー・ブルーピンク・ゼブラグロー・イワシカラーが定番。朝まずめはグローカラーが有効なことが多い。ただ、おれはカラーで悩みすぎてジグ箱の前で5分固まる、みたいなことをよくやってました。今は「まず実績のあるイワシ系か青系を結んで、3〜40投反応がなければ思い切ってチャートやピンクに変える」と決めて、ローテーションのリズムだけ守るようにしてます。大事なのは1色に固執しないこと。さっきまで沈黙してた海が、カラーを変えた1投目でいきなり食ってくる——青物ではこれが本当に起きるので、「色を替える勇気」も立派なテクニックだと思ってます。あとアクションのほうも、ただ速く巻くだけじゃなくて、ワンピッチジャーク(1回しゃくって1回巻く)のリズムを一定に刻むこと。このリズムを覚えるまでが、初心者がいちばん時間のかかる壁でした。
ランディング
青物は引きが強く、堤防の高さがある場所ではタモ網(ランディングネット)が必須です。
ブリクラスになるとファイト中にラインが切られることもあるため、リーダーの太さとノットの強度を事前に確認しておきます。ここはケチると一番後悔する部分です。せっかく良型を掛けて、足元まで寄せてきて、あと一歩というところで抜き上げようとしてラインがプツン——あの脱力感を一度味わうと、もうタモなしでは行けなくなる。おれは過去にやらかして、海面でバレたブリがゆらゆら沈んでいくのを呆然と見送ったことがあります。
ファイトのときに意識しているのは、無理に巻かないこと。青物は最初の突っ込みが一番強いので、そこを耐えて、走るときは無理に止めずにドラグを効かせて走らせる。魚が止まったタイミングで少しずつ巻いて寄せる。この「押したり引いたり」のやり取りを焦らずやれるかどうかで、取り込めるかバラすかが変わります。寄せてきたら、タモは相手の頭から迎えにいく。尻尾側から追いかけるとさらに走られて泥沼になるので、頭を先に枠に入れるイメージで構える。慣れないうちは手が震えてタモ入れで失敗するけど、これも場数です。おれも何匹バラしたか分かりません。
食べ方
ブリは刺身・しゃぶしゃぶ・照り焼き・カマの塩焼きが定番です。
寒ブリ(冬のブリ)が最も脂が乗っていますが、秋のワラサ・ブリも十分おいしい。血の少ない白身の部位は刺身にしてもクセがなくておすすめです。むしろ秋の個体は脂がしつこすぎず、さっぱりした刺身が好きな人にはこっちのほうが合うと思う。息子は脂の乗りすぎた寒ブリより、秋のワラサの刺身のほうが「あっさりしてて食べやすい」と言って何切れもおかわりするので、家ではけっこう好評です。
おいしく食べる一番のコツは、釣った直後の処理です。掛けたあとに放っておくと身に血が回って臭みが出るので、釣り上げたらすぐにエラを切って血抜きをする。これをやるかやらないかで、家に持ち帰ったときの味が別物になります。おれも昔は「釣れた、やった」で満足してそのままクーラーに放り込んでいて、家で食べて「青物ってこんなに血くさいのか」とがっかりしてました。きちんと締めた魚を食べてから、処理の大事さがようやく身に染みた。せっかく苦労して釣った魚なので、最後の一口までおいしく食べてやりたいよね。照り焼きにすると子どもも喜ぶし、カマの塩焼きはビールが止まらなくなる。釣りの楽しみは、海から食卓までつながってると思ってます。
やまちゃんが青物初挑戦で完全惨敗した話
最初に青物を狙ったのは10年くらい前です。
朝マズメに堤防に立って、メタルジグを遠投して、しゃくって、しゃくって——3時間で1バイトも取れませんでした。隣の人は3本釣ってた。同じ海、同じ時間帯、距離にして10メートルも離れていないのに、なんでこんなに差が出るんだと、半分泣きそうになりながら投げ続けたのを覚えてます。腕はパンパン、手のひらにはマメ、それでも何も起きない。あの「がんばってるのに報われない」感じが、青物ジギングの最初の洗礼でした。
後から聞いたら、その人は「ジャークのリズム」と「ジグの重さ選び」をちゃんとやってたらしい。おれはとにかく遠くに投げて速く巻けばいいと思い込んでいた。飛距離が出れば偉い、巻きが速ければ食う、くらいの単純な発想で、ジグが今どの層を泳いでいるかなんて1ミリも考えてなかった。要は「数を打てば当たる」と思っていたわけで、まったく的外れだったんですね。
あの3時間と交通費と道具代、無駄にしたな——という後悔を今でも引きずってます(笑)。でもいま振り返ると、あの完全惨敗があったから本気で調べる気になったとも思う。帰ってから動画を見たり、釣具屋のおじさんに「あの日なんで釣れなかったんですかね」と恥を忍んで聞いたりして、ワンピッチジャークのリズムと、底を取れる範囲で軽いジグを選ぶことを覚えた。そうしたら世界が変わった。翌月、同じ堤防でやっと初ワラサを釣り上げたとき、竿先に重みが乗った瞬間の「キタッ」という感覚は、いまでも鮮明に思い出せます。あの一本がなかったら、おれは青物をあきらめてたかもしれない。釣りって、こういう負けと勝ちのアップダウンがあるから抜けられないんだよなぁ。
Q&A よくある質問
Q. ショアジギングタックルはどれくらい必要ですか?
A. ロッド・リール・ジグを合わせると最低3〜4万円ほど。それ以下のセットアップは青物の引きに負けてラインブレイクするリスクがあります。「ちゃんとしたもの1式」の方が結果的に安い。
Q. ナブラがないときはどうすればいいですか?
A. 潮目・堤防先端・岬の先端などの地形的なポイントを狙います。ナブラがなくても青物はいます。底付近を丁寧に探るスロージャークが有効なことが多い。
Q. ジグはどれくらいのウェイトを準備すればいいですか?
A. 40g・60g・80gの3サイズを揃えるのが基本。水深と潮流で変えます。浅い堤防なら40g中心、沖の磯なら80gが出番増えます。
Q. ランディングネットは本当に必要ですか?
A. ブリ・ワラサクラスなら絶対に必要です。堤防から抜き上げようとすると、ラインが切れるか竿が折れるかのどちらかになります。タモなしで釣ったブリを海に落としたことがあります(泣)。
Q. 釣れたブリはどう処理しますか?
A. 釣った直後に即シメ(エラ切り・神経締め)が鮮度に直結します。大型クーラーボックスに氷を入れて持ち帰り。同日に捌かない場合は内臓だけ先に取り出しておくと翌日も美味しく食べられます。
秋のナブラ撃ちは最高に興奮します。海面が割れて、銀色の魚体が朝日に光って、竿先にズドンと重みが乗るあの瞬間のために、おれは眠い目をこすって早起きしてる。釣れない日のほうが多いし、ボウズで帰る車の中でため息をつくこともしょっちゅうです。それでも、たまに掛かるあの一本がすべてをチャラにしてくれる。うまくいかなくても、海を眺めながらコーヒー飲んで、気持ちのいい風に当たれば、それだけで来た甲斐があったと思える。まぁ、楽しけりゃいいよね。