秋のサーフ釣りを始めたのは、「ヒラメが釣れると刺身が最高」という話を聞いてからです。釣り仲間の一人が「砂浜でヒラメ上げて持ち帰って刺身にしたら、家族が黙って三回おかわりした」と言うのを聞いて、おれの中で勝手にハードルが上がってしまった。刺身が好きな息子の顔が浮かんで、これは行くしかないな、と。
サーフ(砂浜)でメタルジグやワームを遠投して底付近を引いてくる釣り方で、ヒラメとマゴチが主なターゲット。フラットフィッシュゲームと呼ばれます。底にべったり張りついた平たい魚を、上を通すルアーで誘い出す——文字にすると単純なんですが、これがやってみるとなかなか奥が深い。
最初は「砂浜で釣れるの?」と半信半疑でした。おれの中で砂浜のイメージって、夏に子どもと貝を掘る場所であって、まさかそこから高級魚が上がるとは想像もしていなかった。でも通ってみたら本当に釣れた。ヒラメは平べったいのに引きが強くて、最初に掛けたときは「根がかりか?」と思ったくらい重かった。寄せてくる途中でグンッと首を振る感触が竿先に伝わってきて、上がってきたときの形が独特で面白かった。砂をまとった白い腹を見せて波打ち際で身をくねらせる姿は、写真で見たどのヒラメより生々しくて、しばらく見とれてしまいました。広い砂浜にぽつんと立って、海の大きさをまるごと相手にしている感じ。これはこれで、おれの好きな時間の過ごし方だなと思ったわけです。
ヒラメとマゴチの違い
どちらも砂地に潜んでいる底物の魚で、上を通るベイト(小魚)を待って捕食します。普段は砂に半分埋まってじっとしていて、目の前を小魚が通った瞬間に飛び出して食う——待ち伏せ型のハンターですね。だからルアーも、ずっと泳がせ続けるというより「底のすぐ上を通してやる」意識が大事になる。これを知ってからは、自分のルアーが今どのへんの高さを泳いでるのか、を頭の中で想像しながら巻くようになりました。
ヒラメ:目が体の左側にある。白身で旨い。高級魚として有名。秋〜冬が旬。引きが強くて、掛かるとガツンと首を振るような重い手応えがきます。サイズが伸びると「座布団」なんて呼ばれ方をするくらい平たくデカくなる。
マゴチ:目が背中側についている。体がずんぐりしていて頭が大きい。刺身は甘みがある。ヒラメより底にべったりしている印象で、おれの体感だとルアーをよりゆっくり、底をなめるように引いたときに反応してくれることが多かった。
どちらもヒット率はそれほど高くなく、「一日中キャストして1〜2枚釣れれば上出来」くらいの釣りです。正直に言うと、おれも最初の数回はボウズ(一匹も釣れないこと)が続きました。広い砂浜のどこに魚がいるのか見当もつかなくて、ただ漠然と投げては巻き、投げては巻きを繰り返すだけ。「これ、本当に魚いるのか?」と心が折れかけたこともある。でもこの釣りは、釣れない時間が長いぶん、一枚掛けたときの喜びがやたら大きい。だから通えるんだろうなと思います。確率の低い釣りだからこそ、丁寧に一投を組み立てる意味があるんですよね。
タックルの考え方
ロッド
サーフ専用の「サーフロッド」がありますが、ショアジギングロッドやシーバスロッドで代用可能です。おれは最初、わざわざ専用竿を買うのをためらって、手持ちのもので何とかならないかと考えていました。結論を言うと、最初の一本は手持ちの竿か、せいぜいエントリーモデルの一本でいいと思います。サーフは一日中投げ続ける釣りなので、まず自分が「この釣り、続けられそうか」を確かめてから本気の竿を買っても遅くないからです。
長さは9〜11ft。遠投するために長い竿が必要です。なぜ長さがいるかというと、サーフはとにかく沖の遠いところまでルアーを届けたい場面が多いから。竿が長いほどキャストのときにルアーを大きく振り抜けて飛距離が伸びる。ただし長い竿は重くて、慣れないうちは腕がパンパンになります。おれも初日に張り切って投げまくった結果、翌日は腕が上がらなくなりました。だから長さを選ぶときは「振り抜ける範囲で長め」が判断基準。自分の体力に合わない長さを選ぶと、後半で雑なキャストになって飛距離も精度も落ちるので、見栄を張らないほうがいいです。
リール
4000〜5000番の大型スピニングリール。ラインを大量に巻けること、巻き取りが速いことが重要。遠投する釣りなので、まず糸がたっぷり巻けないと話にならない。それと巻き取りが速いリールだと、足元まで寄せてきたルアーを素早く回収してすぐ次のキャストに移れる。手返し(一投にかかる時間)が速くなると、それだけ多く投げられて、結果としてヒットのチャンスも増えるわけです。安い番手違いを選んで「糸巻き量が足りなくて遠投できない」となるのが一番もったいないので、ここは番手をケチらないほうがいい、というのがおれの考え。
ライン
PE1〜1.5号にフロロ20〜30lbのリーダー。PEラインは細いのに強くて飛距離が出るので遠投向き。ただ擦れに弱いので、先端には擦れに強いフロロのリーダーを結んでおきます。サーフは砂や貝殻でラインが意外と傷みやすくて、おれも一度リーダーを省いて細いまま使ったら、ヒラメを掛けたところでプツッと切られて泣きました。あの「掛けたのに獲れなかった」感覚は本当に悔しい。だからリーダーは多少めんどくさくてもちゃんと組んでおいたほうがいい、というのは失敗から学んだ部分です。
ルアー
- メタルジグ 20〜40g:遠投できて底まで沈ませやすい。ヒット率が高い。風が強い日や、とにかく遠くを探りたいときの頼れる一軍。おれは迷ったらまずこれを結びます
- ミノー(サーフ系シンキング):底付近を泳がせる。食わせの力が強い。ジグだと反応がないときに、ふわっとした動きで食わせる切り札になることがある
- ワーム(シャッドテール):ジグヘッドに付けて底を這わす。マゴチに特に有効。テールがピロピロ動いて、ゆっくり底をなめる動きが出せるのがいい
ルアーの使い分けで悩む人は多いと思うんですが、おれの場合は「まずメタルジグで広く探って魚の居場所のアタリをつけ、反応がありそうな場所をワームでねちっこく攻める」という順番に落ち着きました。最初から全部のルアーを完璧に揃える必要はなくて、メタルジグ数個から始めて、物足りなくなったら一種類ずつ足していくのが結局いちばん遠回りしない買い方だと思います。あれもこれもと買って結局使わないルアーが箱の肥やしになるのが、初心者あるあるなので。
釣り方の基本
遠投してボトムをとる
できるだけ遠くへキャストして、ルアーが底に着くまで待ちます。この「底を取る」というのが、最初はなかなか感覚がつかめませんでした。ルアーを投げたあと糸が出ていくのをじっと見ていて、ふっと糸の張りが緩む瞬間がある。それが底に着いた合図です。最初はこれが全然わからなくて、ずっと宙ぶらりんのまま巻いていたんだと思います。底を取れていないと、待ち伏せしている魚の射程に入らないので、当然のように釣れない。ここがわかるようになってから、おれの釣果は少し変わりました。
底を取ったら、リールを巻きながら少しずつルアーを浮かせて動かす。サーフには離岸流(沖へ向かう流れ)があって、その流れの脇が好ポイントです。離岸流って言われてもピンとこなかったんですが、波打ち際をぼーっと眺めていると、周りより波が立たずに沖へ向かって動いている筋が見えることがある。色が少し濁って見えたり、白い泡が沖へ流れていったり。ベイトもそこに集まりやすいから、フラットフィッシュも待ち構えている、という理屈です。最初のうちは見分けがつかなくても、毎回「どこが流れてるかな」と海を観察するクセをつけるだけで、だんだん目が慣れてきます。闇雲に投げるより、まず海をよく見る。これは何度通っても変わらない基本だなと感じています。
「マゴチング」の動き
マゴチはルアーが底付近をゆっくり動くときに食いつきやすい。ただし砂をほじらない速さで巻くのがコツ。速すぎると底から離れて誘いにならないし、遅すぎてズルズル砂を引きずると砂煙が立って魚が嫌がる気がする。この「底すれすれを、砂をかかない絶妙な速さで」というさじ加減が、言葉にすると簡単なのにやると難しい。おれも何度も砂を掘ってしまって、ルアーに海藻や砂をくっつけて回収する羽目になりました。理想は、底をトンと感じたらほんの少し巻いて浮かせ、また沈めて底をトン、の繰り返し。リズムで覚える感じですね。
ヒラメは少し速めに動くルアーにもリアクションで食いつくことがあります。マゴチがじっくり食わせ系なら、ヒラメは反射で食う場面もある、という印象。だから同じ場所でも、ゆっくり攻めて反応がなければ少しテンポを上げてみる、という引き出しがあると粘れます。どっちが正解というより、その日その時間で当たりの動きが違うので、決めつけずに試すのが結局いちばん釣れる近道だと、おれは思っています。
秋がサーフのベストシーズン
秋(9〜11月)はベイトフィッシュ(イワシ・コウナゴなど)が砂浜近くに寄ってくる時期で、ヒラメとマゴチの活性が上がります。エサとなる小魚が岸近くに群れると、それを追ってフラットフィッシュも接岸してくる。つまり魚が「食べに来ている」状態なので、こっちのルアーにも口を使ってくれやすいわけです。逆に言うと、ベイトがいない真冬の閑散とした砂浜だと、同じ場所でも別世界みたいに反応がなかったりする。だから「いつ行くか」が、サーフではけっこう大きい。
朝まずめ(日の出前後1〜2時間)と夕まずめが特に釣れやすい。これも理由があって、薄暗い時間帯は魚の警戒心が薄れて、ベイトを追って岸際まで入ってきやすいからだと言われています。おれの体感でもまさにその通りで、釣れたのはたいてい空がだんだん白んでくるあの時間帯でした。まだ暗いうちに砂浜に着いて、寒さに震えながらルアーを結んで、最初の一投を投げる。だんだん水平線が赤くなって、波の音だけが響いている。あの静けさの中に立っているだけで、もう来てよかったと思えるんですよね。逆に日が高くなると、ぱたっと反応が止まることが多い。だから無理して昼まで粘るより、朝の短い時間に集中するほうが効率がいい、というのが通って分かったことです。早起きはしんどいけど、その価値は十分あります。
砂浜に立って海を見ながらルアーを投げ続ける時間は、思考が空っぽになる感じがして好きです。仕事のあれこれも、頭の中の雑音も、投げて巻いてを繰り返しているうちに波の音に溶けて消えていく。釣れても釣れなくても、海と一対一で向き合っているこの感覚そのものが、おれにとってのごほうびなんだと思う。
正直、サーフは効率だけ考えたら割の合わない釣りかもしれません。一日中投げて坊主の日もあるし、腕も腰もくたくたになる。でも、だからこそ一枚のヒラメが上がったときの嬉しさは格別だし、持ち帰って息子と刺身にして食べたときの満足感は、何にも代えがたい。これは買って損なかった趣味だな、と砂浜で竿を振りながら毎回思っています。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. ヒラメとマゴチの違いは何ですか?
どちらも砂地に潜む底物ですが、ヒラメは目が体の左側にあって白身で高級魚、マゴチは体がずんぐりしていて頭が大きく刺身に甘みがあります。秋〜冬がヒラメの旬です。
Q. サーフ釣りに向いているシーズンはいつですか?
秋(9〜11月)がベストシーズンです。イワシやコウナゴなどのベイトフィッシュが砂浜近くに寄ってくる時期でヒラメとマゴチの活性が上がります。朝まずめが特に釣れやすい。
Q. サーフ釣りのルアーは何から揃えれば良いですか?
メタルジグ20〜40gが遠投できて底が取りやすくてヒット率が高いのでまずはこれを揃えるといいです。ミノーやシャッドテールワームは慣れてきてから追加する感じでいいと思います。
Q. 砂浜での釣り方のコツを教えてください。
遠投して底に着いたらリールを巻きながらルアーを少しずつ浮かせる引き方が基本です。離岸流(沖へ向かう流れ)の脇が好ポイントで、そこを集中的に探るとヒット率が上がります。
Q. サーフ釣りに適したロッドの長さは何フィートですか?
9〜11フィートのロッドが遠投できて感度のバランスが良いです。MLクラスが軽量ルアーから重めのメタルジグまで幅広く扱えて便利です。