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北海道の渓流に入ったとき、まず川の大きさに驚きました。

本州の渓流は「山から流れてくる細い川」というイメージですが、北海道は平野部の川も渓流の一部で、スケールが全然違う。本州だと「ここを越えたら向こう岸」という幅の川を、おれは渡渉しながら釣り上がるのに慣れていたんですが、北海道の川は対岸まで石を投げても届くか怪しい。水量も多くて、流れの押しが本州の渓流の比じゃない。立ち込んだ瞬間に「これ、足元すくわれたら流されるな」と背筋がひやっとしたのを覚えています。

水の色も違いました。本州の渓流は岩盤を流れる透き通った水という感じですが、北海道の川は深い緑がかった青で、底が見えそうで見えない。光が水中に差し込むと、白い砂地の上を魚がすうっと走るのが分かる。あの景色を初めて見たとき、しばらく竿を出すのを忘れて川面を眺めていました。釣りに来たはずなのに、川そのものに見惚れてしまう。北海道の渓流には、そういう力があります。


北海道の渓流釣りの特徴

本州にいない魚種

北海道の渓流で釣れる魚の中に、本州では出会えない種が多い。これがおれにとって遠征の一番の動機でした。地元の管理釣り場でニジマスやヤマメを釣るのも楽しいんですが、「ここでしか会えない魚」というのは別格の重みがある。

イトウ:日本最大の淡水魚。幻の魚と呼ばれる。1m以上になる個体もあり、保護対象になっている川も多い。正直なところ、おれはイトウを狙ってちゃんと釣れる腕も知識も持っていません。生息域は限られていて、その川のことを知り尽くしたうえで通い詰めないと手が届かない魚です。だから今回は「いつか出会えたら」くらいの気持ちで、無理に狙いには行きませんでした。狙わない、というのも遠征の作法のひとつだと思っています。

オショロコマ:北海道固有のイワナの仲間。朱色の斑点が特徴的で、一度見ると忘れられない美しさ。手のひらに乗るくらいの小さな個体でも、あの朱点を見た瞬間に「来てよかった」と素直に思えました。本州のイワナの白点とは全然違う、生命そのものが色を持っているような鮮やかさです。

アメマス:ニッコウイワナの北海道亜種。本州のイワナより大型になる傾向がある。引きが強くて、本州のイワナのつもりで合わせると主導権を取られます。おれも最初の一尾は完全に呑まれて、強引に寄せようとしてバラしました。北海道の魚は、本州の同じ仲間より一回りも二回りも野性的だと感じます。


釣り場の種類

道北・道東エリア

イトウが生息する川があります。道東の知床・釧路湿原周辺には手つかずの自然が残る渓流が多い。歩いても歩いても人工物が見えてこない区間があって、本州の渓流に慣れた身からすると「この先に本当に道はあるのか」と不安になるくらいです。携帯の電波も心もとない場所が多くて、入る前に地図と帰り道を頭に叩き込んでおかないと、夢中で釣り上がっているうちに自分がどこにいるか分からなくなる。おれも一度、釣りに集中しすぎて気づいたら予定よりずっと上流まで来ていて、戻りに思った以上の時間がかかったことがありました。

ただし、自然保護が厳しいエリアもあり、事前に漁業規制・禁漁区域を確認する必要があります。ここは強く言いたいところで、「知らなかった」では済まされない場所が北海道にはあります。守られているからこそ、あれだけの魚と景色が残っている。だから禁漁区や規制は「縛り」ではなく「未来の釣り場を守る約束」だと考えて、面倒くさがらずに調べる。これは遠征者として最低限の礼儀だと思っています。

道央・十勝エリア

ニジマス(レインボートラウト)の野生化した個体が多い川があります。野生化したニジマスは引きが鋭くて、ヒットした瞬間にジャンプしたり下流へ突っ走ったりするので、本州の管理釣り場で慣れたつもりでいると面食らいます。おれは管理釣り場でプレッソを振っているときの「優しい引き」のイメージを引きずって入って、最初の一尾でラインを出されてあたふたしました。野生の魚は、同じ魚種でも別物だと痛感した瞬間です。

十勝川水系はサイズの良いアメマスで知られ、渓流釣りのレベルが上の人に向いています。レベルが上、というのは技術というより「川を読む経験値」のことだとおれは解釈しています。広い川のどこに魚が着いているかを見抜く目、流れの押しに対して立ち位置を決める判断、そういうものは場数でしか身につかない。だから初遠征でいきなり難しい川に挑むより、まずは入りやすい川で北海道の流れの感覚を体に入れてから、というのがおれの考えです。


遠征の計画

シーズン

北海道の渓流解禁は4月上旬〜10月下旬が多い(地域・魚種により異なる)。

6〜8月は夏の高山・道東の短い夏を楽しみながら釣りができます。本州の暑さを逃げてくる人も多い。実際、おれが入ったときも昼間の本州ならぐったりするような時間帯なのに、川辺は驚くほど涼しかった。水の冷たさが空気まで冷やしているのか、長袖を着ていてちょうどいいくらいでした。本州の真夏は朝マズメと夕マズメに釣れる時間が偏りがちですが、北海道の短い夏は日中でも魚が動いてくれる印象があって、一日を通して竿が出せるのがありがたい。ただ、その短い夏を狙う人が集中するので、有名な川ほど先行者がいることも珍しくありません。「人より上流に入りたい」と早起きを競う必要が出てくるのも、人気エリアの宿命です。

逆に言えば、解禁直後の春先や秋の終わりは人が少なくて、自分のペースで川と向き合えます。おれは混雑が苦手なので、できれば盛期を少し外したいと思っているんですが、そうすると今度は天候のリスクが上がる。北海道の春は雪代で増水していることも多いし、秋は冷え込みが厳しい。どの時期を選ぶかは、混雑と気候と狙う魚のバランスで決まる。一発で正解は出ないので、何度か通って自分なりの「ちょうどいい時期」を見つけていくしかないんだろうなと思っています。

アクセス

飛行機+レンタカーか、フェリー+自家用車の2択が現実的です。

フェリーは大洗〜苫小牧(18時間程度)が一般的。釣り道具・キャンプ道具を満載で乗れるのがフェリーの利点。おれにとってはこれが決め手でした。飛行機だと竿やクーラー、キャンプ道具を制限の中に詰め込まないといけないし、現地でレンタカーに積み替える手間もある。その点フェリーなら、自分の車にいつもの装備をまるごと積んで、そのまま北海道を走り出せる。車中泊の道具一式を持ち込めるので、現地での宿の縛りからも解放されます。

ただ、18時間というのは想像以上に長い。おれは「船旅も遠征の楽しみのうち」と割り切って、デッキで風に当たったり、雑魚寝スペースで仮眠を取ったりして過ごしました。船が苫小牧に近づいてきて、甲板から北海道の陸地が見えてきたときの高揚感は、飛行機でひとっ飛びでは味わえないものです。時間とお金、どちらを取るかは人それぞれですが、道具を満載して非日常へ向かう感覚を大事にしたい人には、おれはフェリーをすすめます。


注意事項

ヒグマ対策

北海道の山・渓流にはヒグマが生息しています。本州のツキノワグマも怖いですが、ヒグマは体格も力も別格で、出会ってしまったら人間にできることはほとんどありません。だからこそ「出会わない努力」が全てです。おれは普段、関東近郊の渓流ではそこまで神経質にならないんですが、北海道では明らかにギアを切り替えました。

遭遇リスクを下げるために:

  • 熊鈴を必ず装着
  • 単独行動より複数人で行く
  • 朝夕の薄暗い時間の単独行動を避ける
  • クマが出没している情報は事前に確認する

熊鈴は「鳴らしておけば安心」というより、「こちらの存在を早めに知らせて、向こうに避けてもらう」ための道具です。渓流は水の音が大きいので、鈴の音が思ったほど遠くまで届かないこともある。だからおれは、見通しの悪いカーブや藪を抜けるときには、わざと声を出したり手を叩いたりして音を足していました。少し間抜けに見えても、ばったり鉢合わせするよりずっといい。あと、これは正直に書きますが、北海道の山に一人で立っていると、本州では感じない種類の緊張があります。その緊張感を「めんどくさい」と思うか「これも自然の中に入る代償」と受け止められるかで、向き不向きが分かれる気がします。

6〜7月はブヨ・ヌカカが多い時期。長袖・防虫スプレー・防虫ネットが必須です。これは本当に甘く見ない方がいい。おれは「夏でも涼しいなら虫も少ないだろう」と勝手に思い込んでいて、防虫対策を軽めにして痛い目を見ました。ブヨは刺されると後からじわじわ腫れて、数日かゆみが引かない。釣りに集中したいのに、手の甲や首筋を刺されると気が散ってしょうがない。

防虫スプレーは塗り直しが前提です。川に立ち込んでいると汗と水で効果がすぐ落ちるので、おれはこまめに塗り直すようにしています。顔まわりのうるさい時間帯は、防虫ネットを帽子の上からかぶってしまうのが一番楽でした。見た目はともかく、刺されてかゆい思いをするより、最初から完全防備で釣りに集中する方が結果的に楽しめます。これは買って損なかった装備のひとつです。


釣果と感想

オショロコマを初めて釣ったときの朱点の鮮やかさは、今でも覚えています。冷たい流れの中から上がってきた魚を手のひらに乗せて、横っ腹に散った朱色の点を見た瞬間、声が出ました。図鑑や写真で何度も見ていたはずなのに、本物は色の深さが違う。光の当たり方で朱が燃えるように見えたり、落ち着いたオレンジに見えたりする。しばらく眺めてから、なるべく魚を傷めないように水に戻しました。釣れた一尾を持ち帰らなくても、あの数十秒で遠征の元は取れたと思えるくらいの感動でした。

数だけで言えば、北海道だからといって入れ食いになるわけではありません。おれの腕では、川を読み違えて反応のないポイントを延々と探ってしまった時間も長かった。でも、それでいいんです。広い川を前に「次はあの白泡の脇か、それとも淵の頭か」と考えながら一歩ずつ釣り上がる時間そのものが、本州では味わえない贅沢でした。釣果の数字より、その川に自分が立っていたという事実のほうが、後になって効いてくる。

本州の釣りでは絶対に出会えない魚と景色が北海道にはある。遠征コストはかかりますが、一度は行く価値があります。誰にでも気軽にすすめられる釣りではないし、ヒグマや増水のリスクを考えると準備も覚悟もいる。でも、その手間とコストを越えてでも会いに行きたい魚と川がある人には、北海道は最高の遠征先になります。おれはまた行きたいと思っています。


北海道の川の水の冷たさは格別でした。立ち込んでいると、足元からじわじわ冷えが上ってきて、夏なのに指先がかじかむほど。その冷たさの中から、本州では会えない魚が上がってくる。手間もお金もかかったけれど、あの一尾と、人工物の見えない川の景色を思い出すと、また行きたくなる。遠征は計画も準備も大変だし、ヒグマも虫も増水も怖い。それでも、帰ってきてしばらく経つと、不思議とまた北海道の川に立っている自分を想像してしまうんですよね。まぁ、楽しけりゃいいよね。



よくある質問

Q. 北海道の渓流釣りで本州と違う魚は何ですか?

イトウ(日本最大の淡水魚)・オショロコマ(朱色の斑点が特徴の北海道固有種)・アメマス(本州より大型になるニッコウイワナの亜種)など本州では出会えない魚が釣れます。

Q. 北海道渓流遠征のアクセス方法は何がいいですか?

飛行機+レンタカーか、フェリー+自家用車の2択が現実的です。大洗〜苫小牧のフェリー(18時間程度)は釣り道具やキャンプ道具を満載で乗れるのが大きな利点です。

Q. 北海道の渓流釣りのベストシーズンはいつですか?

解禁は4月上旬〜10月下旬が多く、6〜8月は本州の暑さを逃れながら夏の大自然を楽しめます。地域・魚種によって異なるため、事前に漁業規制を確認してください。

Q. 北海道の渓流でのヒグマ対策はどうすればいいですか?

熊鈴の必須装着、単独行動を避けて複数人で行くこと、朝夕の薄暗い時間の単独行動を控えることが基本です。事前にクマの出没情報を確認してから入渓してください。

Q. 北海道渓流遠征にはどんなタックルが向いていますか?

フライフィッシングが川幅の広さに対応できて有効です。遠征にはパックロッドがコンパクトに収納できてフライトバッグや電車移動でも持ち運びやすくておすすめです。


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