冬の釣りで「もう帰りたい」と思う理由は、ほぼ100%寒さです。
おれも釣り歴は10年以上あるんですが、最初の何年かは冬の釣りがほんとに苦手でした。魚が釣れていても、指がかじかんで動かなくなってリールを巻けない。歯がカチカチ鳴って、足元がじんじんして歩くのがしんどい。頭の中が「寒い、寒い」でいっぱいになって、肝心の釣りに集中できなくなる。こうなるともう、せっかく早起きして向かった釣り場なのに、車に戻ってヒーターを最強にすることしか考えられなくなるんですよね。
なにより嫌だったのが、寒さで「判断力」まで鈍ること。アタリが出てるのに合わせが遅れる、ラインの結び直しが面倒で雑になる、足場の悪いところで踏ん張りがきかない。冷えって、ただ不快なだけじゃなくて、釣りそのものを下手にするんです。
それが冬専用の防寒装備を一通り揃えてからは、12月〜2月でも2〜3時間の釣行がふつうに快適になりました。「寒くて帰る」が「日が暮れたから帰る」に変わった。これは大げさじゃなく、釣りの世界が変わったくらいの違いでした。だから今回は、おれが何度も寒さで失敗しながらたどり着いた防寒の考え方を、優先順位ごとにまとめておきます。
防寒の優先順位
寒さ対策には優先順位があります。これを間違えると、お金をかけたわりに寒い、という残念なことになります。
- 体幹(首・胸・腹):ここが冷えると全身が冷える
- 足元(靴下・ブーツ):地面からの冷えは盲点
- 手先(グローブ):操作性を維持しながら保温
おれが昔やった失敗が、まさにこの順番を逆にしたことでした。手がいちばん辛いから、と最初にいい手袋を買ったんです。たしかに手は多少マシになった。でも体の芯が冷えてると、結局全身がガタガタ震えて手袋だけじゃどうにもならない。逆に体幹さえしっかり温めておくと、血が温かいまま末端まで巡るから、手や足の冷えもずいぶん軽くなるんですよね。「中心から外に向かって温める」というのが、何年も冷えながら学んだおれの結論です。
なぜ体幹が最優先かというと、ここには大事な血管と内臓が集まっているからです。お腹や腰が冷えると体は「熱を逃がさないように」と手足の血管をきゅっと締める。だから末端から先に冷えていく。つまり指先が冷たいのは、本当の原因が指じゃなくてお腹側にあることが多いわけです。手袋を厚くするより、まず腹巻きや厚手のインナーを足すほうが効いた、ということがおれは何度もありました。
頭部は帽子・ネックウォーマーで対応できます。意外と首は重要で、ここを太い血管が通っているので、ネックウォーマー1枚あるだけで体感がだいぶ変わります。風が強い堤防だと、首元から冷気が入ってくるだけで一気に体温を持っていかれるので、安いものでいいから1枚は持っておきたいところです。
インナー・ミドルレイヤー
防寒インナー(ベースレイヤー)
発熱・保温素材のアンダーウェアが基本です。発熱インナー的なものを全身(上下)着ると効果が高い。上だけ着て下を普通の下着で済ませると、太ももから冷えてくるので、ケチらず上下セットで着るのがコツです。
ただ、ひとつ注意があります。汗をかいたあと、その汗で逆に冷える「汗冷え」ってやつです。おれは昔、ランガンでよく歩く釣りのときに発熱インナーで汗だくになって、止まった瞬間に背中がスッと冷えてゾッとしたことがあります。発熱素材は便利だけど、汗を吸ったあとの乾きが遅いものだと、これが起きる。だから「動く釣り」のときは、汗をかいてもベタつかない素材を選ぶのが大事だと痛い目を見て学びました。
釣りでは体を動かすので、蒸れにくい素材を選ぶとより快適です。メリノウールは保温性と通気性のバランスが良い。羊の毛なので、濡れてもある程度暖かさが残るし、汗の臭いも出にくい。化繊より値は張りますが、肌に当たる一番下の1枚をウールにするだけで、汗冷えのストレスがかなり減ります。どんな人に向くかというと、堤防でじっと待つ釣りより、渓流や管理釣り場で歩き回るタイプの人ほど恩恵が大きいと感じます。
ミドルレイヤー(中間着)
フリースや中綿ジャケットをインナーの上に着ます。
ここで覚えておきたいのが、「空気の層」が暖かさの正体だということ。アウターとの間に空気の層を作るのが防寒の基本で、1枚の厚いものより「薄いものを2枚重ね」のほうが保温効果が高いことがあります。重ねた服と服の間に動かない空気がたまって、それが断熱材みたいに働くからです。
この「重ね着」のもう一つの利点が、脱ぎ着で体温を調整できること。冬の釣りでも、車から歩いてポイントに着くまでは汗ばむくらい暑かったり、いざ釣り始めて動かなくなると一気に冷えたり、と体感がコロコロ変わります。1枚の分厚いダウンだと暑い/寒いの二択しかないけど、薄手を何枚か重ねておけば、暑けりゃ1枚脱ぐ、冷えてきたら着る、で細かく合わせられる。おれは車に予備のフリースを1枚積んでおいて、状況で足し引きするようにしています。これだけで「暑くて汗かいて、止まったら汗冷え」の負のループをかなり防げます。
手袋(フィッシンググローブ)
釣りの防寒で最も重要な道具のひとつが手袋です。手は道具を直接さわる部分なので、ここが使えなくなると釣りそのものが成立しなくなります。
ただ、ここで初心者がやりがちな失敗があって、おれもまさにやりました。とにかく暖かさだけを求めて、スキー用みたいな分厚い指先まで覆われた手袋を買ったんです。たしかに暖かい。でも、いざ仕掛けを結ぼうとすると指先が利かない。小さな針を持てない、ガン玉をつまめない、細いラインが指先で感じ取れない。結局イライラして手袋を外し、素手で結んで、また冷えて、の繰り返し。これじゃ何のための手袋かわからない。
そこで行き着いたのが「指先が開くタイプ」です。指が出ないと、仕掛けのセット、針へのエサ付け、ラインの操作が難しくなる。だから親指・人差し指・中指の3本指が出るタイプが定番で、釣りの操作をしながら手の平と残りの指を保温できます。出ているのは実際に作業で使う3本だけで、あとはちゃんと包まれているから、思っているほど寒くないんですよね。指先がかじかんできたら、空いてる時間に残りの指で握り込むようにして温め直す。これができるのが3本指の地味に効くところです。
選ぶときのもうひとつのポイントが、サイズをジャストで合わせること。大きすぎると指先と生地の間に隙間ができて、ラインを触ったときの感度が落ちます。冬は厚着で手もこわばりがちなので、つい大きめを選びたくなるけど、操作系の手袋に関してはピッタリめが正解です。
素材についても触れておくと、ネオプレン素材(ウェットスーツと同じ素材)は水に濡れても保温力が維持されるので、岸壁での釣りや渓流でのウェーディングに向いています。冬の堤防だと波しぶきや魚を触った手の濡れは避けられないので、「濡れる前提」で選ぶのが現実的。普通の布の手袋だと一度濡れると逆に冷えの元になりますが、ネオプレンは濡れてもそこそこ暖かさが残ってくれるので、海まわりで釣るなら断然こっちです。
足元の防寒
足元の冷えは「地面からの伝導冷え」で、コンクリートや岩の上に長時間立っていると体感より早く冷えます。空気を通して冷えるのと違って、地面に直接触れている分、冷たさがダイレクトに足の裏から伝わってくる。だから上半身はそこそこ温かくても、足だけがいつの間にか感覚がなくなってる、ということが冬の堤防では本当によく起きます。
おれが足元をなめてた頃は、普通のスニーカーに普通の靴下で釣り場に立っていました。最初の30分は平気なんです。でも気づくとつま先がじんじんしてきて、1時間もすると足の指の感覚がなくなる。足が冷えると、不思議と全身のやる気まで削られていくんですよね。盲点になりがちだけど、ここをケアするかどうかで冬の釣りの快適さが大きく変わります。
靴下
ウールの厚手靴下が最強です。ウールは濡れても保温力が維持され、乾きやすい。さっきのインナーと同じ理屈で、羊の毛は汗をかいてもそこそこ暖かさを保ってくれる。一日歩いて足が蒸れても、足元から冷えてくる感じが化繊の靴下とは全然違います。
ここで覚えておきたいのが、重ね履きは逆効果のことがある、ということ。寒いからと2枚も3枚も重ねると、靴の中がきつくなって足が締め付けられ、かえって血行が悪くなって冷えるんです。おれもやりました。厚手を2枚履いてブーツに押し込んだら、足先がパンパンに圧迫されて、結局いつもより早く冷えた。締め付けると血が巡らない、血が巡らないと冷える、という当たり前のことに後から気づいたわけです。だから良いウール靴下を1枚、足の指を軽く動かせるくらいの余裕を持って履くほうがいい。
ブーツ
防水・保温性能のあるブーツが必要です。地面からの冷えを断つには、靴底に厚みがあって地面と足の間に空間があるものが効きます。底が薄いと、せっかく良い靴下を履いても冷たさが筒抜けになってしまう。
冬の波が来る堤防や渓流ウェーディングではネオプレンウェーダーが最強。ウェーダーの中に厚手靴下を履くと全く問題ありません。水に立ち込む渓流でも、ネオプレンが水温の冷たさをしっかり遮ってくれるので、足元が水に浸かっているのに暖かい、という不思議な感覚になります。どんな人に向くかというと、波しぶきのかかる堤防の先端や、足を水に入れる渓流に通う人ほど、ここに投資する価値があります。逆に、濡れる心配のない場所でのんびり釣るだけなら、普通の防寒ブーツで十分です。自分がどんな場所で釣るのかで選ぶのが、無駄なお金を使わないコツだと思います。
カイロの活用
防寒装備が揃っていても、特に寒い日はカイロを追加します。装備で土台を作って、最後のひと押しをカイロで足す、というイメージです。
どこに貼るかが大事で、おれのおすすめは背中とお腹です。貼るカイロをアウターの内側(背中・お腹)に貼るのが基本。理由は、さっきの優先順位の話と同じで、体幹を温めると血が温まって末端まで暖かさが届くから。手が冷たいからって手の甲にカイロを貼るより、お腹に貼ったほうが結果的に手まで温まる、ということがよくあります。特に背中の肩甲骨の間あたりに1枚貼ると、ぽかぽかが全身に回る感じがして、おれは寒い日の定番にしています。足先用カイロも使い捨てのものが便利で、靴下の上から貼っておくと、地面からの冷えにじわじわ抵抗してくれます。
ただし、ここは正直に注意しておきます。貼りすぎると低温やけどのリスクがあります。皮膚に直接貼ったり、長時間同じ場所に当て続けないように注意します。「そんなに熱くないから大丈夫」と油断するのが一番危ない。じんわりした温かさでも、同じ場所に何時間も当て続けると皮膚がじわじわダメージを受けます。必ず服の上から貼って、たまに場所をずらす。これだけ守れば、カイロは冬の釣りのありがたい味方になってくれます。寝てしまうと危ないので、車中泊で使うときも肌に直接当てっぱなしにしないのが鉄則です。
冬の釣りは寒さとの戦いでもあるけれど、ここまで挙げてきた装備を一通り揃えると、その戦いがぐっと楽になります。体幹を温めて、足元を断熱して、手の操作性を確保して、最後にカイロでひと押し。たったこれだけのことなんですが、これを知る前と後では本当に別世界でした。
それに、寒い時期にしか味わえないご褒美もあります。夏場は混み合う人気の釣り場が、冬はうそみたいに空いている。澄んだ冷たい空気の中で、自分の吐く息だけが白く流れていく。手がかじかむのを我慢して掛けた一匹は、なぜか夏の十匹より記憶に残るんですよね。装備で寒さを抑え込めるようになると、こういう冬ならではの良さを、ちゃんと味わう余裕が生まれます。
防寒は我慢比べじゃなくて、準備で勝てる勝負です。最初に少しお金と手間をかけておけば、あとは何年も快適に冬の釣りを楽しめる。おれみたいに何度も冷えて遠回りする前に、まずは優先順位の高いところから手を打ってみてください。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. 冬の釣りで防寒対策の優先順位はどうすべきですか?
体幹(首・胸・腹)→足元→手先の順が正解です。体幹が冷えると全身が冷えるので、まずは防寒インナーを全身に着てから手袋・ブーツを揃えると効率的です。
Q. 釣り用の手袋はどんなタイプが使いやすいですか?
親指・人差し指・中指の3本指が開くタイプが定番です。指先を出して仕掛けのセットやラインの操作ができながら、手の平と残りの指を保温できます。ネオプレン素材は濡れても保温力が維持されておすすめです。
Q. 足元の防寒はどうすれば効果的ですか?
ウールの厚手靴下1枚が基本です。重ね履きは血行を阻害して逆効果になることがあるので、良質なウール靴下1枚にするほうが保温効果は高いです。
Q. カイロの効果的な使い方は?
貼るカイロをアウターの内側(背中・お腹)に貼るのが基本で、足先用カイロも便利です。皮膚に直接貼ったり長時間同じ場所に当て続けると低温やけどになるので注意が必要です。
Q. 冬の釣りインナーにウールとヒートテックどちらがいいですか?
釣りでは体を動かすため、保温性と通気性のバランスが良いメリノウールが優れています。ヒートテックは蒸れが気になることがあり、濡れると保温力が下がる弱点があります。