1泊2日で、誰にも会いませんでした。
文字通り、一人の人間とも会わなかった。入渓点から出るまでの2日間で。
これは孤独なのか、それとも贅沢なのか、帰りの車で考えたんですが、どっちでもあった気がします。
きっかけは「山形の渓流がやばい」という一言
渓流釣りを始めて2年目のことです。
ネットで調べていたら、山形の某支流の記録が出てきた。「人が入っていない区間でヤマメが入れ食いだった」という記録。
つりナビでその時期の渓流条件も確認した。「気温が安定して水温が落ち着いてくる時期はヤマメの活性が上がりやすい」。条件は悪くなさそうでした。どこの川かは書いてなくて、でも「山形の内陸の支流」というヒントと、地形図を照らし合わせて、目星をつけました。
半ば推測で行くことにした。「外れてもいい、渓流テント泊の練習になる」くらいの気持ちで。
入渓まで、すでに一仕事
山形市内で車を停めて、そこから林道を2時間歩く計画でした。
荷物はテント、シュラフ、クッカー、食料、防水バッグに入れた釣り具。合計15kgくらい。
「これで渓流を遡行するのか」と歩き始めてすぐに思いました。
林道はまだいい。問題は林道が終わってから沢沿いを歩く区間。岩が濡れてる。足が滑る。ザックが重くて重心が後ろに引っ張られる感じがある。
途中で1回、岩の上で滑って膝をついた。膝は大丈夫でしたが、ヒヤッとした。
「無理はしない」これ鉄則なんですが、この日はもう少し早い段階でセーフティラインを引いておくべきでした。
ウェーダーは最初から装着した方がいい
最初は岸を歩いていたんですが、川幅が狭くなってくると岸がなくなる。
渡渉しながら進む、というより、ほぼ川の中を歩く区間が出てきた。
ウェーダーを途中で履き替えるのは手間がかかるし、荷物を下ろした状態で岩場で着替えるのは危ない。入渓点から最初からウェーダーを履いていた方がよかった、という反省があります。
ヤマメが本当に釣れた
テントを張れる平らな場所を見つけたのが昼の2時ごろ。
荷物を降ろして、タックルだけ持って、上流に向かった。
一投目でヤマメが来た。
22cmくらい。尺には届かないけど、渓流のヤマメとしては充分なサイズ。黒点のパターンがきれいで、しばらく見てしまった。
その後、場所を変えるたびに釣れる。
岩陰、流れ込み、淵の縁。教科書通りの場所に、教科書通りにヤマメがいる。
「これは本当に誰も来ていないのか」と思うくらい、魚のスレ方がない。ルアーに躊躇なく食いつく。
夕方までで10匹を超えた。リリースを含めたら20匹くらいは触ったと思います。
渓流ロッドについて
渓流のルアー釣りは、5〜6フィートの短いロッドが使いやすい。
木が覆い被さる狭い渓流で、長い竿は振れない。バックスペースが取れないから、サイドキャストやロールキャストが基本になる。
テントの中で熊鈴の音がした
夜中の2時ごろでした。
シュラフの中で半分寝ていたら、音がした。
チリン、チリン。
「え」
起き上がる。耳を澄ます。
チリン、チリン。
少し遠い。でも確実に聞こえる。
「熊鈴の音だ」とすぐわかりました。渓流歩きをしてる時に自分の腰につけているあの音。誰かがいるのか?と思ったけど、夜中の2時に誰かが歩いているはずがない。
正直、怖かったです。
テントの中で声も出ず、ライトも消したまま、30分くらいそのまま聞いていた。
音は遠くなっていって、そのまま聞こえなくなりました。
朝になってキャンプ場のおじさんに話したら、「あの辺は熊が出るんですよ」とあっさり言われた。
熊がいたのかどうかはわかりません。でも、二度と確かめたくない夜でした。
ヤマメの塩焼き、朝ごはん
翌朝は4時に起きて、前日に持ち帰ったヤマメ3匹を塩焼きにしました。
クッカーで直火にかけて、両面じっくり焼く。渓流魚は脂が少ないので、強火より中火でゆっくり焼く方がいい。
緑の多い谷の中で、川の音を聞きながら、ヤマメを食べる。誰もいない。虫の声だけがある。
「これをやるために生きてる」という気分が、朝の5分間だけ訪れました。
源流テント泊、やるなら何を準備するか
絶対に必要なものをざっくり書きます。
- ウェーダー(最初から履く)
- 熊鈴と熊スプレー(熊スプレーは今回忘れた。持っていきます)
- ヘッドライト(枕元に置く)
- 防水バッグ(転倒した時に道具が濡れる)
- 地形図・コンパス(スマホだけに頼らない)
- ファーストエイドキット(岩で転んだ時用)
これは趣味ですが、「準備を怠った趣味は命に関わる」と実感してます。
渓流は危ない。誰もいない。助けを呼んでも来ない。
それでも行きたくなる、という自分への言い訳として、「だから準備する」があります。
東北の渓流、また行きます
あの支流に、来年また行こうと思ってます。
熊鈴は腰だけじゃなくて、テントの周りにも張り巡らせて。
ヤマメはいた。景色はあった。誰もいなかった。
東北の渓流の良さ、関東の渓流とは別物です。規模が大きくて、人が少なくて、魚がスレていない。
行く体力と準備がある人なら、一生に一度は経験してほしい。
良い渓流を。