釣りキャンプで雨に降られたことは何度もあります。
最悪だったのは、テント設営途中から降り始めて、設営が終わるころにはびしょ濡れになっていた時。空がやけに早く暗くなったなと思ったら、ぽつ、ぽつ、と来て、ポールを通している最中に一気に本降りになった。手はふさがってるし、フライシートはまだかぶせてない。中途半端な状態で雨に打たれながら作業を続けるしかなくて、首筋から背中に冷たい水が流れ込んでいく感覚を今でも覚えています。
そのまま焚き火をつけようとして薪が濡れていてつかなくて、結局コンビニ飯で終わった夜。火がつかないと分かった瞬間の、あの「あー、今日は終わったな」という気持ち。雨音だけが響くテントの中で冷えたおにぎりを食べながら、何が悪かったのかをずっと考えていました。設営の段取りなのか、道具の置き方なのか、そもそも来たことが間違いだったのか。
「雨だから行かない」という判断もありですが、せっかく取った休みを天気で無駄にしたくない気持ちもある。釣り歴10年以上やってきて、車中泊も覚えて、せっかく予定を組んだ日が雨だっただけで全部キャンセルというのも、なんだかもったいない。それに、雨予報が出るたびに中止していたら、行ける日なんてほとんど残らないんですよね。天気は思い通りにならない。だったら雨でも楽しめる自分になったほうが早い。そこから雨対策をちゃんと考えるようになりました。
雨の日の釣りは意外と悪くない
まず、釣りについての本音を書くと、「雨の日は釣れることがある」です。
雨が降ると水面が波立って、いわゆるさざ波が立つ状態になる。これが魚から見ると人の影や仕掛けが目立ちにくくなるらしくて、晴れて鏡みたいに凪いだ日よりも魚が警戒を解いて口を使ってくれることがある。実際、ピーカンの真昼間に全然反応がなかったのに、ぱらぱらと雨が落ちてきた途端に当たりが出始めた、なんてことを何度か経験しています。なんで急に、と思うけど、たぶん水面の変化で魚側が大胆になったんだろうなと。
濁りが入った直後も同じで、上流から流れ込んだ茶色い水が魚の警戒心を下げて、エサを追いやすくしてくれることがある。特に渓流釣りでは、雨後に少し増水したタイミングで魚の活性が上がるのを実感しています。水量が増えると上流から虫やエサになるものが流されてきて、魚はそれを待ち構える。だから、ちょっと濁って、ちょっと増えた——このさじ加減のときが、おれの中では渓流の一番のチャンスタイムだと思っています。
ただし、ここを勘違いすると痛い目に遭います。大雨・暴風は別です。「雨は釣れる」を真に受けて、ゴウゴウと音を立てて濁流になった川に立ち込むなんて論外。増水は一瞬で水位が上がるし、落雷はカーボンのロッドを持っている釣り人にとって本当に命に関わる。空が暗くなって遠くでゴロゴロ鳴り出したら、釣果がどうとか言っていられない。おれは「あと一匹」を我慢して竿をたたんで車に戻る、という判断を何度もしてきました。撤退は負けじゃない。次の休みにまた来ればいい話です。小〜中雨くらいなら装備次第で十分楽しめる。線引きをはっきりさせておくのが、雨の釣りを長く楽しむコツだと思っています。
雨対策の3本柱
1. レインウェア
上下セットのレインウェアは必需品です。これだけはケチらないほうがいい、というのがおれの結論。
釣りの場合、ただ濡れなければいいというものではなくて、動きやすさが何より重要です。キャストするときに腕を大きく振る、足場の悪い岩を越える、しゃがんで魚を取り込む——この一連の動きを邪魔しない作りかどうかで、一日の快適さがまるで変わる。だから袖口がマジックテープなどで絞れるタイプ・フードが大きめのものを選んでいます。袖口が緩いと、腕を上げたときにそこから雨水が伝って肘まで濡れてくる。フードが小さいと帽子のつばに当たって視界が狭くなるし、横を向いたときに顔だけ濡れる。こういう小さなストレスが積み重なると、釣りそのものに集中できなくなるんですよね。
渓流での足場が悪い場所では、レインウェアの下半身はウェーダーと組み合わせることになります。上はレインジャケット、下はウェーダー、という組み合わせ。境目から水が入らないように、ジャケットの裾をウェーダーの外にかぶせるように着るのが基本です。
価格帯はいろいろですが、おれの場合は2〜3万円台の中堅ゴアテックス製品を買ってから「これで十分だ」と感じています。最初の頃は「雨具なんて濡れなきゃ何でもいい」と思って、ホームセンターで買った安いものを使っていました。これが大失敗で、確かに外からの雨は防ぐんですが、内側に自分の汗がこもって、結局びしょびしょになる。雨で濡れたのか汗で濡れたのか分からない状態で、しかもサウナスーツみたいに蒸れて気持ち悪い。安いレインウェアは通気性がなく、着ているだけで蒸れて不快です。防水透湿という言葉の意味を、身銭を切って初めて理解しました。ちゃんとしたものを一着持っておけば、何年も使えて結局は安上がり。これは雨対策の中で一番投資する価値がある場所だと思っています。
2. タープ
雨の日のキャンプで最も役に立つのがタープです。正直、雨キャンプの快適さの8割はタープで決まると言ってもいいくらい。
テントの入り口側にタープを張ると、そこが雨を凌げる「リビング」になる。焚き火台、調理スペース、道具置き場をタープ下に集めておくと雨の影響を最小限にできます。これがあるかないかで、雨の日のキャンプはまったく別物になる。タープがないと、雨が降った瞬間に全員テントの中に逃げ込むしかなくて、狭い空間でただ雨が止むのを待つだけの時間になってしまう。でもタープ下に居場所があれば、雨を眺めながらコーヒーを淹れたり、のんびり次の釣りの作戦を練ったりできる。雨音をBGMにタープの下で過ごす時間って、慣れてくると逆に贅沢に感じるんですよね。
張るときに一つだけ気をつけているのは、屋根に角度をつけて雨水の逃げ道を作ること。タープを真っ平らに張ると、中央に水がたまって、その重みで布がたわんで、最後はバシャッと一気に落ちてくる。これを何度かやらかして学びました。だから片側を低くして、水が自然に流れ落ちるように張る。それだけで水たまりができなくなります。あと、テントとの距離が近すぎると風で煽られたときにぶつかるし、遠すぎると吹き込んだ雨でテントの入り口が濡れる。このあたりの位置取りは、何度か失敗しながら体で覚えていく感じです。
タープの張り方は数種類あって、慣れると15分ほどで設営できます。最初は雨の中で説明書とにらめっこして30分以上かかって、その間にずぶ濡れになっていました。今は設営の手順が頭に入っているので、降り出す前にサッと張れる。雨対策で一番大事なのは、実は「降る前に動くこと」かもしれません。
3. 防水バッグ・ドライバッグ
カメラ、スマートフォン、財布、地図などの濡れてはいけないものは防水バッグに入れます。
なぜここに一つ枠を割いているかというと、過去にスマホを雨で壊しかけたことがあるからです。普通のリュックに入れておけば大丈夫だろうと油断していたら、長時間の雨でリュックの生地がじわじわ染みて、底のほうに入れていたスマホがしっとり濡れていた。幸い完全には壊れなかったけど、しばらく動作が怪しくて肝を冷やしました。釣り場で写真を撮ったり、潮や天気を確認したりするのにスマホは欠かせないので、これが使えなくなると一日の楽しみが半減します。
防水バッグのいいところは、ロールトップ式のものなら口をくるくる巻いて留めるだけで密閉できる手軽さ。いちいちジッパーを気にしなくていいし、多少雑に扱っても中は守られている。完全防水のドライバッグは1,000〜2,000円台から買えます。この値段でスマホの修理代と一日の安心を買えると思えば、迷う理由がない。一個持っておくと、雨の日だけじゃなくて、渓流で転んで水没しかけたときや、ボートに荷物を積むときにも役立ちます。
テントの雨対策
テントは「防水」といっても、買ったときのままずっと完璧、というわけではありません。意外と弱点になるのが縫い目(シーム)で、生地そのものは水を弾いても、糸を通した針の穴からじわっと浸水することがあります。新しいうちは大丈夫でも、何年も使っていると縫い目のテープが剥がれてきて、そこから染みてくる。寝ているときに背中がなんとなく冷たいな、と思ったら浸水していた、というのは雨キャンプあるあるです。
対策として、シームシーラー(縫い目の防水処理剤)を年1回程度塗っておくと安心です。シーズン前に晴れた日を選んで、テントを広げて縫い目に沿って塗っていく。地味な作業ですが、これをやっておくかどうかで雨の夜の安心感が全然違う。実際に染みてから「やっておけばよかった」と後悔するより、先に手を打っておくほうが精神衛生上いいんですよね。
それから、フライシート(テントの外側)の生地が劣化すると防水性が落ちます。新品のときは水が玉になってコロコロ転がり落ちるのに、古くなると水が生地に染み込むように広がるようになる。これが撥水性が落ちたサインです。こうなったら撥水スプレーをかけると復活することがあります。完全に元通りとはいかないけど、寿命を延ばせる。
そして意外と見落とされがちなのが、テントの設営場所です。どんなに防水性能が高いテントでも、水が集まる場所に張ったら意味がない。地面を流れてきた雨水がテントの下に溜まれば、ボトムから浸水してくる。だから水が集まりやすい窪地や斜面の下は避けます。設営前に地面をぐるっと見渡して、雨が降ったらどっちに水が流れるかを想像する。ほんの少し高くなっている場所、水はけのよさそうな砂利の地面を選ぶ。この一手間が、夜中に水浸しのテントで目を覚ます悲劇を防いでくれます。おれは一度、何も考えずに低い場所に張って、明け方に寝袋の下が池みたいになっていたことがある。あれ以来、場所選びだけは念入りにやるようになりました。
雨の日のキャンプ飯
雨でも焚き火ができれば気分が上がります。あの揺れる炎を見ているだけで、じめじめした雨の気分がだいぶ和らぐ。タープの下で、雨音を聞きながらパチパチ燃える火を眺めて、温かいものを食べる——これができると「今日は雨だけど、まあ来てよかったな」と思えるんですよね。ただし、ここに一つ大きな落とし穴がある。薪は濡れると使えない。
冒頭に書いたコンビニ飯の夜も、まさにこれが原因でした。現地調達でいいやと思って濡れた薪に火をつけようとして、煙ばかりでちっとも燃えない。火打ち石を擦るみたいに何度も着火を試みて、結局あきらめた。あの惨めさを二度と味わいたくないので、今は対策しています。事前に薪をビニール袋に入れて車に積んでおく、あるいはキャンプ場で販売している薪を購入するのが確実です。屋根のある場所で保管されている売り物の薪は乾いていることが多いので、雨予報の日はあてにできる。家から持っていくなら、新聞紙や着火剤も一緒に防水して持っていくと、湿気で着火剤までしけって泣く、ということがなくなります。
それでも火がつかない日のために、保険としてバーナーは必ず持っていきます。バーナー調理は雨でも問題なく使えるのでガス缶があれば安心。焚き火がダメでも、バーナーがあれば温かい食事と飲み物だけは確保できる。最低限これさえあれば、冷たいおにぎりで一夜を過ごす羽目にはならない。タープ下で調理できる体制を作れれば、雨でも快適なキャンプ飯が楽しめます。雨の日こそ、温かい汁物が体に染みる。寒くて湿った夜に、湯気の立つ味噌汁やラーメンをすするときの幸福感は、晴れた日の何倍も大きい気がします。
雨の中でも「楽しめた」という経験が積み重なると、天気に振り回されなくなります。最初は雨予報を見るたびにテンションが下がっていたのが、今では「雨なら雨で、あの過ごし方ができるな」と頭を切り替えられるようになった。装備と心構えが整うと、雨は敵ではなくなる。むしろ人が少なくて、魚は釣れて、タープの下でのんびりできる——そう思えば、雨の釣行も悪くない。完璧な晴れの日ばかり待っていたら、釣りに行ける回数なんてたかが知れています。どんな天気でもそれなりに楽しむ。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. 雨の日の釣りは釣れないの?
むしろ釣れることがあります。雨が降ると水面が波立って魚が警戒しにくくなり、濁りが入った直後は魚の活性が上がることがあります。特に渓流釣りでは雨後の増水で活性が上がるのを実感しています。ただし大雨・暴風・落雷の危険がある場合は安全第一で撤退します。
Q. 釣りの雨対策に一番重要な道具は?
防水透湿素材のレインウェア(上下セット)です。安いレインウェアは通気性がなく長時間着ると蒸れて不快になります。2〜3万円台のゴアテックス製品を買ってから「これで十分だ」と感じていて、何年も使えるので結果的にコスパが良いです。
Q. 雨でもキャンプ場で焚き火はできる?
タープを正しく張れれば雨でも焚き火できます。テントの入り口側にタープを張ってリビングスペースを作り、薪は事前にビニール袋に入れて車に積んでおくのがポイントです。濡れた薪は使えないので、キャンプ場で販売している薪を現地購入するのも確実な方法です。
Q. 雨キャンプでテントが浸水しないようにするには?
シームシーラー(縫い目の防水処理剤)を年1回塗っておくと安心です。フライシートが劣化していれば撥水スプレーで復活することがあります。設営場所は水が集まる窪地や斜面の下を避けるのも重要で、これだけで浸水リスクが大きく下がります。
Q. 雨の日のキャンプでカメラやスマホを守るには?
防水ドライバッグに入れるのが一番確実です。リュックやサコッシュだけでは雨が染みることがあります。1〜2,000円台から手に入るので、濡らして後悔するより最初から防水ポーチを持っておくのをおすすめします。