息子と初めて釣りに行ったときにサビキ釣りを選びました。
正直に言うと、子供を連れていく最初の釣りで何より怖かったのは「一匹も釣れずに終わること」でした。せっかく早起きして堤防まで連れていって、息子が「つまんない、帰りたい」と言い出す——あの空気が一番こわかった。だから「とにかく釣れてほしい」という一心でサビキ釣りを選んだんです。
結果として、これは正解でした。その日だけでアジを30匹以上釣ることができた。バケツの中で銀色の小アジがぴちぴち跳ねて、息子が顔を真っ赤にしながら竿を握りしめている。自分で竿をあおって、ぐっと重みが乗った瞬間に「来た!来た!」と叫んだあの顔は、今でも忘れられません。海の照り返しがまぶしくて、潮の匂いと、足元のコンクリートの熱と、子供の歓声。あの一日でおれは「釣りは釣果じゃなくて、この時間が全部だな」と思い知りました。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、サビキ釣りは手軽だけど「竿を垂らせば勝手に釣れる魔法」ではない、ということです。やり方を間違えると、隣のおじさんは入れ食いなのに自分のバケツだけ空っぽ、なんてことが普通に起きる。逆に言えば、押さえるべきところさえ押さえれば、初心者でも子連れでもちゃんと数が出る。その押さえどころが、時期・仕掛け・コマセの3つです。この3つを理解すると、釣果がぐっと安定します。
サビキ釣りとは
仕掛けに複数のハリ(6〜8本)が付いていて、魚を集めるコマセ(まきエサ)と一緒に使う釣り方です。
ハリといっても、エサをつけるわけではありません。ハリ一本一本にピンクや白の「スキン」(薄いゴムのひらひら)や「ファー」(細い毛のようなもの)が巻いてあって、これがアミエビの小さな粒に化けて魚をだます。つまり仕掛けそのものが擬似エサになっているわけです。だから手は汚れないし、ハリにエサをつける手間もない。子供がいても回しやすいのは、この「エサつけ作業がいらない」というところが大きい。
仕組みはシンプルです。コマセを撒くと、その匂いと白っぽい粒に誘われて小魚の群れが集まってくる。集まった魚は夢中でコマセを食べていて、その中に紛れているハリのスキンを、コマセの粒だと勘違いして食いつく。これがサビキの原理です。うまくいくと、群れがハリの列ごと包み込むように寄ってくるので、1投で2匹3匹、多いときは6本のハリ全部に掛かって上がってくることもある。竿がぐぐっと重くなって、抜き上げると鈴なりに小アジがぶら下がっている——あの瞬間が子供にはたまらないらしくて、息子は今でも「いっぱい付いてるやつ釣りたい」と言います。
逆に言うと、コマセで魚を寄せられていなければ、どんなにいい仕掛けを使っても食ってこない。「魚を集める」のが半分、「集まった魚にハリを食わせる」のがもう半分。この両輪がそろって初めてサビキは数が出る釣りなんだ、とおれは理解しています。
時期と対象魚
サビキ釣りで釣れる魚は主にアジ、サバ、イワシです。
| 時期 | 釣れやすい魚 |
|---|---|
| 春(4〜6月) | コアジ、イワシ |
| 夏(7〜9月) | アジ、サバ(群れが大きい) |
| 秋(10〜11月) | アジ(型が大きくなる)、サバ |
| 冬(12〜3月) | 渋い。釣れる場所が限られる |
夏〜秋がもっとも釣りやすいシーズンです。港や堤防に群れが入ってくる時期で、数釣りを楽しめます。
なぜ夏から秋がいいのかというと、水温が上がって小魚の活性が高くなり、岸近くまで群れがどっと寄ってくるからです。アジやイワシは沖から岸沿いに回遊してくる魚なので、群れが堤防のすぐ足元まで入ってくる時期に当たれば、初心者でも子連れでも面白いように釣れる。逆に冬は水温が下がって群れが深場や沖に落ちてしまうので、足元に仕掛けを落とすだけのサビキだと届かないことが多い。冬に釣れる場所が限られるのは、群れそのものが岸からいなくなるからなんです。
おれの感覚だと、同じ夏でも「朝マズメ」(日の出前後)と夕方は群れの寄りが段違いに良い。日中の暑い時間帯はぱったりアタリが止まって、息子が「もう飽きた」とコンクリートに寝転がる時間が長くなる。だから子連れで行くなら、無理せず朝のうちにサクッと釣って早めに切り上げるのが、お互い気持ちよく終われるコツだと思っています。秋は型が一回り大きくなって、唐揚げだけじゃなく刺身もいけるサイズが混じってくるので、食べる楽しみも増える。まぁ、楽しけりゃいいよね、という前提で言えば、一番ハズレが少ないのはやっぱり夏から秋です。
仕掛けの選び方
サビキ仕掛けはハリのサイズと装飾(スキン・ファー)で種類が分かれます。
ハリのサイズ
- 4〜6号:小型アジ・イワシ向け。子供でも使いやすい
- 7〜9号:中型アジ・サバ向け
- 10号以上:大型アジ・サバ向け
釣り場の情報(小アジが多いのか、大型が回っているのか)をできれば事前に確認してから選びます。
ここでおれが最初にやった失敗を白状すると、最初の頃は「大きいハリのほうが大きい魚も小さい魚も両方釣れて得じゃん」と思って、何も考えずに大きめの号数を買っていました。これが完全に裏目で、足元に寄っているのが小アジばかりだと、ハリがでかすぎて口に入らない。隣で同じ場所をやってる人はポンポン釣ってるのに、自分だけアタリはあるのに掛からない、という地味につらい時間を過ごしました。サビキは「その日その場所に寄っている魚の口のサイズ」にハリを合わせるのが基本で、大は小を兼ねないんです。
判断の目安はこうです。迷ったら、まず小さめ(4〜6号)から始める。小さいハリは小アジにもイワシにも掛かるし、運よく中型が来ても口に入りさえすれば上がってくる。逆に大きいハリは、小さい魚が相手だと完全に空振りする。つまり、外したときのダメージが少ないのは小さい号数のほうなんです。とくに子連れで「とにかく一匹釣らせてあげたい」というときは、小さめを選んでおけばまず外しません。号数で迷って釣りそのものが楽しくなくなるくらいなら、小さいのを買って数で楽しむ。それがおれの結論です。
ハリのサイズだけじゃなく、スキンの色も実は当たりはずれがあります。ピンクが効く日もあれば、なぜか白じゃないと食わない日もある。これは正直やってみないと分からないので、おれは色違いを2〜3種類カバンに入れておいて、現地で釣れないときにさっと付け替えられるようにしています。仕掛けは消耗品で根がかりや絡みですぐダメになるから、ケチらずまとめ買いしておくのが結果的にストレスが少ない。
コマセ(まきエサ)
コマセはアミエビが定番です。冷凍ブロックと常温チューブタイプがあり、初心者にはチューブタイプが扱いやすい。
コマセかごにコマセを入れてシャクると、コマセが出て魚を集めます。仕組みとしては、かごの中のアミエビが水中で少しずつ散らばって、その匂いと粒で魚を寄せる。だからサビキは「いかに途切れさせずにコマセを撒き続けられるか」が釣果を左右します。コマセが出ていない時間が長くなると、せっかく寄っていた群れがすっと散ってしまう。これがサビキで一番もったいないパターンです。
冷凍ブロックとチューブタイプの使い分けについては、おれは完全に「誰と行くか」で決めています。一人でじっくり数を狙う日や、何時間も粘るつもりの日は、量が多くて単価の安い冷凍ブロックのほうがコスパがいい。ただしブロックは現場で解凍する手間がかかるし、手や道具がアミエビまみれになって匂いも強烈です。クーラーの中で溶けて汁がこぼれると、後片付けがほんとに憂鬱になる。
一方で息子と行くときは、迷わずチューブタイプにしています。理由は単純で、子供の手や服が汚れにくいから。子供は平気で汚れた手で顔を触るし、車に乗る前に「臭い」と泣かれると一日の楽しい記憶が台無しになる。チューブなら手を汚さずにかごへ直接ぎゅっと出せるし、常温保存できるので車に積みっぱなしにしておける。「今日ちょっと近場でやってみるか」と思い立ったときに、冷凍庫からブロックを出して解凍を待たなくていいのは、地味だけど子育て世代にはかなりありがたい。値段はチューブのほうが割高だけど、おれは「片付けの楽さ」と「思い立ったらすぐ行ける身軽さ」にその差額を払っている感覚です。
釣り方のコツ
タナ(深さ)を変える
魚は水中のどこにいるか分かりません。最初は底から探り、アタリが出た深さで釣り続ける。群れが表層にいることもある。
このタナ探しが、サビキで「釣れる人」と「釣れない人」を分ける一番大きなポイントだとおれは思っています。同じ堤防で同じ仕掛けを使っていても、アジがいる層にハリが届いていなければ一匹も食ってこない。逆に、群れのど真ん中に仕掛けを止められれば、初心者でも入れ食いになる。だから最初の数投は、釣ることより「今日はどの深さに魚がいるか」を探る時間だと割り切るのがコツです。底に着けて反応がなければ、少し巻き上げて止める。それでもダメならまた巻き上げる。こうやって階段を上るように層をずらしていくと、ある深さで急にぐぐっとアタリが連発する瞬間が来る。そこが今日のタナです。
息子と行ったときは、この「探す」という作業が子供には退屈らしいので、おれが先に当たりダナを見つけてから「ここで止めときな」と教えるようにしています。一度釣れる層が分かれば、あとは同じ深さに落とすだけで子供でも釣れる。最初に親がタナを見つけてあげる、これだけで子連れサビキの成功率はぐっと上がります。
シャクり方
仕掛けを底まで沈めてから、ゆっくり2〜3回シャクる(竿をあおる)。コマセが出て魚が集まります。そのまま少し待ってアタリを待つのが基本。
ここで初心者がやりがちなのが、シャクりすぎることです。早く釣りたい気持ちが先走って、バシャバシャと激しく何度も竿をあおってしまう。そうするとコマセが一気に全部出てしまって、肝心の「アタリを待つ間」にかごが空っぽになっている。コマセはちょっとずつ、長く出し続けるのが効くので、シャクりは大げさにやらなくていい。竿先をふわっと持ち上げて、すとんと戻す。それくらいで十分かごからアミエビは散ります。
そしてシャクったあとに「待つ」時間がとにかく大事です。コマセが散って群れが寄ってくるまでにはタイムラグがある。シャクってすぐ釣れないからといって、せわしなく仕掛けを上げ下げしていると、寄ってきた群れがハリに食いつく前に逃げてしまう。おれも昔は待てなくて、何度もこのパターンで群れを散らしました。シャクったら数秒〜十数秒、竿先をじっと見つめて我慢する。この「待ち」が釣果を作ると分かってからは、子供にも「シャクったら10数えて待ってごらん」と言うようにしています。
群れが来たらテンポよく
群れが来ているときは手返しを速くします。釣れたら仕掛けを上げて外して投入、を繰り返す。
サビキの群れは、来るときはどっと来て、抜けるときはあっという間にいなくなる。この「時合(じあい)」と呼ばれる入れ食いタイムは、長くて十数分、短いと数分で終わってしまうこともある。だから群れが来たと分かったら、とにかく一匹でも多く回収することだけを考えてテンポを上げます。のんびり一匹ずつ丁寧に外していると、その間に時合が終わってしまう。
ただ、子連れだとここが悩ましいところで、息子が一匹釣るたびに「見て見て!」と興奮して手が止まる。おれは「うんうんすごい、でも早く落として!」と内心あせりながら、子供の喜びも消したくなくて、結局は子供のペースに合わせることが多い。釣果だけ追えば親が竿を持って効率よく回したほうがいいんだけど、それじゃ何のために連れてきたか分からない。だからおれは、群れが来たら親の竿はいったん置いて、子供の手返しを手伝う係に徹するようにしています。外すのと投入だけ親がやって、釣る瞬間は子供に残す。これがうちのやり方です。まぁ、楽しけりゃいいよね。
釣れたアジの食べ方
小アジ(15cm以下)は唐揚げか南蛮漬けが旨い。中アジ以上になると刺身が楽しめます。
小アジの唐揚げは、頭からまるごとバリバリいけるのが最高です。エラとワタだけ取って、あとは粉をまぶして二度揚げするとカリッカリになる。骨まで食べられるから子供のカルシウムにもいいし、何より「自分で釣った魚を食べる」という体験が子供にとっては特別らしくて、息子は普段は魚に手をつけないのに、自分で釣ったアジは「おれが釣ったやつだ」と言いながら何匹も平らげます。南蛮漬けにすると日持ちもするので、たくさん釣れた日はおれは半分を唐揚げ、半分を南蛮漬けにして翌日以降も楽しんでいます。中アジ以上のサイズが混じったら、その分は刺身にする。釣りたての刺身は身がコリコリしていて、スーパーのアジとは別物の旨さです。
ただ、ここで大事なのが持ち帰り方です。せっかく釣っても、雑に扱うと味が一気に落ちる。釣った日の夜に食べる場合でも、釣れたらすぐ締めて血抜きをして、氷の入ったクーラーに入れる。これをやるかやらないかで、刺身の透明感も唐揚げのふっくら感も変わってきます。小アジくらいのサイズなら一匹ずつ丁寧に締めるのは大変なので、おれは氷水を張ったクーラーに放り込んで一気に冷やす「氷締め」でまとめて処理しています。とにかく釣れた魚を炎天下のバケツに放置しないこと。これだけは子連れでバタバタしていても忘れないようにしています。
翌日以降に回す分は冷凍か干物に加工できます。冷凍するなら血と内臓だけ抜いて袋に小分け。干物は開いて塩水に漬けて干すだけだけど、これが意外と子供と一緒にやると盛り上がる。サビキで数が釣れると「どう食べよう」という嬉しい悩みが生まれます。釣りの楽しさが食卓まで続くのが、おれがサビキを子供との定番にしている理由でもあります。
サビキ釣りは数が出るから面白い。息子と行くときは必ずこの釣り方を選んでいます。
最初は「子供を飽きさせない保険」のつもりで始めた釣りでしたが、何度も通ううちに、おれ自身が一番ハマっているかもしれません。難しいルアー釣りで一日ボウズの日もある中で、サビキは時期と仕掛けとコマセさえ外さなければ、ちゃんと答えを返してくれる。その安心感が、子連れにも、釣りそのものに疲れたときの「原点回帰」にもちょうどいい。釣果に一喜一憂するより、息子と並んで竿を出して、釣れた魚をその夜に唐揚げにして食べる——その一連の流れ全部が、おれにとってのサビキ釣りです。考え方が変わったというより、釣りの一番おいしいところを思い出させてくれたのがサビキだった気がします。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. サビキ釣りで一番釣れる時期はいつですか?
夏から秋(7月〜11月)が一番釣りやすいです。夏は群れが大きくてアジ・サバがよく釣れて、秋になると型が大きくなります。おれが息子と初めて行ったときも夏で、その日だけでアジを30匹以上釣れました。冬は群れが少なくなるので初心者には難しいです。
Q. サビキ仕掛けのハリのサイズはどれを選べばいいですか?
行く釣り場の魚のサイズに合わせるのが基本です。小アジやイワシが多い堤防なら4〜6号、中型アジやサバなら7〜9号を選びます。迷ったら事前に釣り場の情報を調べるか、釣具店で「今何が釣れてますか」と聞くと教えてもらえます。子連れの場合は小さめのサイズの方が扱いやすいです。
Q. コマセは冷凍ブロックとチューブタイプ、どちらがいいですか?
子連れや初心者にはチューブタイプをすすめています。手が汚れにくいし常温保存できるので車に常備できます。冷凍ブロックは価格が安くて量が多いですが、現場で解凍する必要があって扱いが少し面倒です。おれは子供と行くときはチューブタイプにしています。
Q. サビキ釣りで釣れたアジはどうやって食べるのが美味しいですか?
小アジ(15cm以下)は唐揚げか南蛮漬けが旨いです。中アジ以上になると刺身も楽しめます。釣った日の夜に食べるなら締めて血抜きをしてクーラーに入れておけばOKです。翌日以降は冷凍にするか干物にするかで長持ちします。
Q. 釣れているのに途中からアタリが減るのはなぜですか?
タナ(深さ)がずれている場合が多いです。群れは移動するので、アタリが減ったら水深を上下に変えてみることをすすめます。コマセが足りなくなっている場合もあるので、こまめに補充するのも大事です。群れが来ているときは手返しを速くして、群れが抜けたらタナを変えて探り直すのが基本です。