ひとりで釣り車中泊に行く日は、だいたい平日の有休です。
息子が学校、妻が仕事、渋滞もない、釣り場も空いている。この条件が揃う平日の釣行がおれの基本スタイルになっています。週末に家族で出かける日もありますが、ひとりで竿を出す時間はやっぱり別物で、有休が一日取れると分かった瞬間からもう頭の中は釣り場のことでいっぱいになります。仕事の合間にスマホで潮見表を眺めて、ニヤニヤしているおっさんがいたら、たぶんおれです。
最初のころは準備に手間取ったり、現地で「あれを忘れた」となったりしていました。バッグの中をひっくり返してリーダーを探したり、駐車場に着いてから日焼け止めがないことに気づいて舌打ちしたり。せっかく早起きして来たのに、最初の30分を忘れ物のせいで台無しにする。あれが本当にもったいなかった。
今はルーティン化できているので、前日夜30分の準備で翌朝スムーズに出発できます。毎回ゼロから考えるんじゃなくて、「いつもの手順」を体に覚えさせる。これだけで現地に着いてからの集中力が全然違うんです。釣りそのものより、こういう段取りのほうが釣果に効いてるんじゃないかと最近は思っています。この記事では、おれが何度も失敗しながらたどり着いた一日の動き方を、準備から帰宅まで正直に書いておきます。
前日夜の準備(30分)
バッグに入れるもの
釣り道具はバッグにまとめて入れていて、ほぼ常時積載しています。ハイゼットカーゴの荷室にバッグが転がっているのが定位置で、思い立ったらすぐ動ける状態にしてあるわけです。前日に確認するのは:
- ライン(ヘタっていないか)
- ルアー・仕掛け(在庫確認)
- 電気ウキ用の電池
- 偏光グラス(いつも忘れる)
ラインのチェックは指で軽くしごいて、ザラついたり毛羽立ったりしていないかを見ます。前回の釣行で根掛かりを外したときに傷が入っていることがあって、ここで気づかずに現地で大物を掛けるとプツッと持っていかれる。一度それで悔しい思いをしてからは、面倒でも前日に必ず触るようにしました。ルアーや仕掛けも、在庫を「あるはず」で済ませず実際に箱を開けて数えます。「あるはず」が一番危ない。電池はケチると現地でウキが点かなくて泣くので、新品の予備をひとつ余分にバッグへ放り込んでおきます。
食料・飲み物
前日夜に近くのスーパーかコンビニで調達します。
- 朝:カップ麺かシリアル
- 昼:おにぎりかパン
- 夕:インスタント鍋か袋麺
- 飲み物:水2L+コーヒー缶
「釣りながら食べる」ことが多いので、片手で食べられるものを中心に選びます。竿を置いてゆっくり食事、なんて優雅なことはしません。アタリが来そうな時間帯ほど腹が減るのが釣りの不思議なところで、ロッドを脇に挟んだままおにぎりにかぶりつくのが現実です。だから箸が必要なものや、汁がこぼれて危ないものは避ける。インスタント鍋を夕食に選ぶのは、一日冷えた体を内側から温めたいからで、これは味というより儀式に近いです。水2Lは飲みきれなくても必ず積みます。夏場に足りなくなるのは命に関わるし、手を洗うのにも使う。多すぎて困ることは一度もありませんでした。
寝袋・マットのセット
軽バンはフラットにしてあるので、寝袋とマットをセットするだけです。5分以内に終わります。モンベルのダウンハガーを袋から出して広げ、その下にFIELDOORのエアーマットを敷く。マットはあらかじめ半分くらい膨らませておくと、現地で寝るときに口で空気を足すだけで済んで楽です。最初の頃は薄いウレタンマットで寝て腰が痛くて目が覚めていたんですが、厚さのあるエアーマットに替えてから睡眠の質が段違いになりました。寝床の準備を前日に終えておくと、夜釣りで疲れて帰ってきてもバタッと横になれる。これが地味にありがたいんです。
当日朝の出発(4〜5時)
早朝の朝まずめに間に合わせるために、出発は4〜5時が基本です。
前日に準備を終えているので、起きたら水筒にお湯を入れて車に乗るだけ。歯を磨いて顔を洗う間にケトルでお湯が沸く、その時間すら惜しいので動作を重ねます。家族を起こさないように足音を殺して玄関を出て、エンジンをかける瞬間がいつも好きです。まだ真っ暗な住宅街で、ヘッドライトに照らされた道だけがぼんやり浮かぶ。あの静けさの中で「さあ行くか」と一息つく時間は、何年やっても飽きません。
釣り場まで1〜2時間の場合、明るくなる前に現地に着けます。眠気覚ましにコーヒー缶を一本開けて、ラジオを小さくかけながら走る。この移動の時間も釣りの一部だと思っていて、頭の中で今日の組み立てを反芻します。最初はどのポイントに入って、潮が動き出したらどう動くか。考えているうちに東の空がうっすら白んでくる、あの感じがたまらない。
暗い時間から釣り始められると「夜釣り→朝まずめ」という美味しい時間が作れます。魚が口を使うのは光の量が変わる境目で、真っ暗から薄明かりに変わる夜明け前後は一日で一番チャンスが濃い時間帯です。ここに間に合わせるための4〜5時出発であって、逆に言えばここを外すと、せっかく有休を使ったのに一番おいしいところを逃すことになる。だから多少眠くても、出発時間だけは妥協しないようにしています。
現地でのルーティン
到着〜釣り開始
到着したら、すぐに車から飛び出すんじゃなくて、まず運転席に座ったまま釣り場の状況を確認します。窓を少し開けて風の向きと強さを肌で感じる。海面のざわつき具合、潮目の有無、他の釣り人がどこに何人いるか。常連らしき人が竿を曲げているなら、その近くの空いている場所が当たりの可能性が高い。逆に誰もいない一等地は、足場が悪いとか根掛かりが多いとか、何か理由があることも多いです。この最初の数分の観察を省くと、闇雲に竿を出して時間を溶かすことになる。焦る気持ちをぐっと抑えるのが、結局は近道なんですよね。
準備に15〜20分かけて、竿を出します。暗い中でのセッティングはヘッドライトが頼りで、ラインを通す、リーダーを結ぶ、ルアーを付ける、この一連を慌てずやる。指がかじかむ冬場は特に焦らないこと。急いで結んだノットほどすっぽ抜けるというのを、何度も身をもって学びました。
釣りの合間
釣りの合間にコーヒーを飲んだり、車の中で昼寝したりします。日が高くなって魚の活性が落ちる時間帯は、無理に粘らず一度竿を置きます。車に戻って湯を沸かし、温かいコーヒーを手に持って海を眺める。風の音と波の音しか聞こえない中で、誰にも気を遣わずぼーっとする時間。これがひとり釣行の何よりのご褒美だと思っています。
ひとり釣行の自由さがここにあって、疲れたら寝る、腹が減ったら食べる、釣れなかったら場所を変える。誰かに合わせる必要がない。仲間と行く釣りも楽しいけれど、「もう少しここで粘りたい」「いや次行こう」みたいな小さな調整が要らない身軽さは、ソロでしか味わえません。気が向くままに動けるから、判断のすべてが自分の責任で、釣れたときの満足も釣れなかったときの悔しさも、全部まるごと自分のもの。それがいいんです。まぁ、楽しけりゃいいよね、というやつです。
夕方〜就寝
夕まずめ(日没前1〜2時間)が終わったら撤収か、もう1セット夜釣りをするか決めます。判断の基準は単純で、その日の疲労具合と、夕まずめでアタリがあったかどうか。魚っ気を感じた日は、もう少し粘れば夜に化けるかもしれないと欲が出ます。逆に体がだるくて集中力が切れているなら、無理して事故るより早めに切り上げたほうがいい。年々この「引き際の見極め」が上手くなってきた気がします。
疲れている日は夕まずめで終了して、近くの温泉でさっぱりしてから車で寝ます。一日海風に当たって潮でベタついた体を熱い湯に沈める瞬間は、何にも代えがたい。湯上がりに車に戻って寝袋に潜り込むと、もう一瞬で意識が落ちます。温泉に寄ると翌朝の体の軽さが全然違うので、よほど時間がない日以外はなるべく立ち寄るようにしています。
翌朝もう一度釣りをする場合は、朝まずめ(夜明け前後1〜2時間)に起きます。前日に寝床を整えてあるからこそ、夜釣りで疲れていても倒れ込むように眠れて、また早起きできる。この回し方ができるのが車中泊釣行の強みで、宿に泊まる釣りでは絶対にできない芸当です。
忘れ物防止チェックリスト(自分用)
2年間で忘れた頻度が高いもの:
- 偏光グラス(5回以上)
- リーダー(3回)
- 日焼け止め(毎回)
- タオル(2回)
- 釣りライセンス・遊漁券(1回)
偏光グラスを忘れると、水面のギラつきで水中がまったく見えません。足元の沈み根もベイトの群れも分からないまま釣ることになって、せっかくの一日が半分くらい損した気分になる。リーダーを忘れた日は、現地で結べないからもう詰みです。一度それで近くの釣具屋まで往復したことがあって、貴重な朝まずめを完全に潰しました。遊漁券を忘れた渓流の日は、監視員さんに事情を話して現地で買い直すはめになって、頭を下げた記憶があります。どれも「またか」と自分にうんざりする失敗ばかりでした。
これらを「釣り用バッグの外ポケット固定」にしてからほぼ忘れなくなりました。外ポケットなら中身を全部出さなくても上からパッと見えるので、前日チェックが一瞬で済む。忘れやすいものほど、目につく定位置を決めてやるのがコツです。
毎回同じ場所に入れて、毎回同じ順番で確認する。これだけで忘れ物が減ります。人間は気合いや記憶力では忘れ物を防げません。おれみたいに何度もやらかすタイプは、意志に頼るのをやめて仕組みで殺すしかない。チェックリストを紙に書いて貼っておくのもいいし、毎回同じ動線で物を詰めるのでもいい。「考えなくても手が勝手に動く」状態まで持っていけたら勝ちです。
車中泊の質を上げる小道具
- 耳栓:港や駐車場は夜中でも音がある
- アイマスク:朝の光で起きたくない日
- 折りたたみ傘:釣り座から車までの移動
- 虫除けスプレー:夏場必須
耳栓は本当に効きます。港や駐車場は思っているより夜中がうるさくて、トラックのアイドリング音、波が堤防に当たる音、たまに帰り際の釣り人の話し声。神経質なほうではないつもりでも、これが続くと地味に眠りが浅くなる。耳栓ひとつで世界が静かになって、ぐっすり眠れる。アイマスクは、朝まで寝たい日に限って東向きの駐車場に止めてしまったときの保険です。夏の朝日は容赦がなくて、4時半には車内がうっすら明るくなる。もう少し寝たいのに光で起こされるのは、地味にストレスなんですよね。
折りたたみ傘は、雨の中で釣り座から車まで歩くときに、タックルや釣った魚を濡らさないため。傘を差して魚を持って歩く釣りおじさんの図はちょっと間抜けですが、背に腹はかえられません。虫除けスプレーは夏場の渓流や草むらのある釣り場では必須で、忘れると一晩中かゆみと戦うことになります。どれも数百円のものばかりなのに、あるとないとで車中泊の快適さがまるで違う。安物でいいので、ひと通り車に常備しておくと安心です。
ひとりの釣り車中泊は、日常から完全に切り離された時間です。スマホの通知も会議もなく、ただ目の前の海と竿先だけに集中できる。釣れた釣れないも大事だけど、あの静けさと自由さこそが、おれが平日に有休を使ってまでひとりで出かける本当の理由なのかもしれません。
ルーティンを作るのは、釣りを窮屈にするためじゃありません。逆です。準備や段取りで悩む時間を限界まで削って、その分を「ぼーっと海を眺める」とか「アタリを待つ」とか、釣りの楽しい部分に全振りするための仕組みです。最初はおれもガチガチに考えていたけど、今では体が勝手に動いてくれるから、現地ではただ釣りに没頭できる。失敗を重ねた末にたどり着いた、おれなりの答えがこの一日の流れです。
完璧な段取りなんて要りません。自分がよくやらかす忘れ物を一つずつ潰して、自分が一番気持ちいい時間配分を見つけていく。それだけで釣行はぐっと快適になります。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. ソロ釣り車中泊の前日準備で最低限やることは?
釣り道具のチェック(ライン・仕掛けの在庫)と食料の調達、寝袋・マットのセットの3つです。30分あれば終わります。おれは前日夜に準備を完結させるルーティンができてから、当日朝は水筒にお湯を入れて車に乗るだけになりました。
Q. 偏光グラスをいつも忘れてしまう。どうすれば忘れない?
釣り用バッグの外ポケットを「必ず入れる定位置」にすると忘れにくくなります。おれは5回以上忘れた後にこれで解決しました。毎回同じ場所に入れて毎回同じ順番で確認するだけで、忘れ物が大幅に減ります。
Q. ひとり車中泊で睡眠の質を上げるグッズは?
耳栓とアイマスクが効果的です。港や駐車場は夜中でも車の音や人の声がするので、耳栓だけでも睡眠の質が変わります。アイマスクは朝の光で起きたくない日に重宝します。安物で十分なので1セット持っておくとよいです。
Q. 平日の釣り車中泊で一番良いと感じることは?
渋滞がない、釣り場が空いている、誰かに合わせる必要がないという3点です。疲れたら寝る、腹が減ったら食べる、釣れなかったら場所を変える。日常から完全に切り離された自由な時間がひとり釣行の最大の魅力です。
Q. 夜釣りから朝まずめまでの時間を効率よく使うには?
到着時間を逆算して、暗い時間から現地入りできるよう4〜5時出発が基本です。夜釣りで一度竿を出して、車で仮眠して朝まずめ前に起きるパターンが体力的に一番楽です。夕まずめ後に近くの温泉でさっぱりしてから眠ると翌朝の調子が違います。