フカセ釣りを始めたのは、磯釣りをしているおじさんが「グレを釣ってみろ、感動するぞ」と言ったのがきっかけです。その人は堤防の先端でずっとウキを眺めていて、声をかけたら手を止めて、自分のクーラーボックスを開けて見せてくれた。中には黒くて分厚いグレが何匹も並んでいて、見た瞬間「おれもこれを釣ってみたい」と素直に思ったんです。
最初はウキの流し方も、コマセとハリスの合わせ方も、全くわからなかった。投げ釣りやアジングみたいに「投げて巻く」「投げて誘う」という単純な流れがなくて、ウキを流しながら海の中で何が起きているのかを想像し続ける釣りだったんですよね。最初の1回目は、ウキをただ眺めているだけで時間が過ぎて、アタリらしいアタリもなく終わった。2回目もコマセを撒く場所がバラバラで、エサとコマセが全然別の流れに乗っていることに後から気づいた。道具を揃えて3回通って、ようやくグレが釣れたとき「これは奥が深い」と思いました。
今でも一番うまくできていない釣り方で、釣るたびに何か学んでいる気がします。逆に言うと、何年やっても飽きない。投げ釣りやサビキだと「今日はこういう日だな」とすぐ読めるようになってくるんですが、フカセは毎回違う顔をしてくる。潮の速さ、風向き、当日のグレの活性、それらが全部噛み合ったときだけウキがきれいに消し込む。その一瞬のために何時間も通っているようなところがあります。まぁ、それが楽しいんだから仕方ない。
フカセ釣りとは
フカセ釣りは、ウキとコマセ(まきエサ)を使ってターゲットの魚を狙う釣り方です。
ハリスに重りをつけず(または最小限にして)、エサを「ふかせた(漂わせた)」状態で魚に見せます。コマセで魚を集め、本命のエサ(オキアミなど)に食いつかせる。言葉にすると簡単なんですが、実際にやってみると「漂わせる」というのがものすごく難しい。重りをほとんど打たないので、ハリスのエサが潮にどう流されているのか、目で見えない。手元のウキの動きと、頭の中で想像したハリスの軌道だけが頼りなんです。
おれが最初にハマったのは、エサを自然に流したいのに、ラインがピンと張ってしまってエサだけ不自然に引っ張られていたこと。これだとオキアミがコマセの群れから浮いてしまって、魚が見破る。ラインを張りすぎず、かといって緩めすぎてアタリを取りこぼさず、という絶妙な加減があって、これが言葉では教えてもらえない部分でした。
タナ(水深の設定)とコマセの流れを合わせる技術が必要で、地味に難しい釣り方です。タナが浅すぎればエサが魚の上を素通りするし、深すぎれば根掛かりするか、底のエサ取りに先に食われる。その日の魚がどの層にいるかを、ウキ下を少しずつ変えながら探っていく。当たり前のようですが、この「探る」という発想を持てるようになるまでが、おれの場合は時間がかかりました。でもその分、釣れたときの達成感が大きい。狙って、組み立てて、答え合わせができた感覚があるんですよね。
対象魚
フカセ釣りでよく狙われる魚:
- グレ(メジナ):磯や堤防に生息。冬が旬で引きが強い
- チヌ(クロダイ):港や内湾にもいる。春・秋がシーズン
- メバル:夜のフカセで釣れることも
グレは磯のフカセ釣りの代表格で、食べても旨い魚です。水温が下がる冬場ほど身が締まって、引きも一段と強くなる。寒い時期にわざわざ磯に立つ人が多いのは、この「寒グレ」を狙っているからなんですよね。おれはまだ本格的な磯のグレには手が届いていなくて、もっぱら堤防で型の小さいのを相手にしているんですが、それでも引きの鋭さには毎回驚かされます。
チヌは性格がまた違っていて、グレが「ガツンと突っ込む」のに対して、チヌは「もそもそと食って、気づいたら重い」みたいな食い方をすることがある。警戒心が強くて、人の気配や物音にも敏感なので、同じウキ釣りでも狙い方の組み立てが変わってきます。港の中でも釣れるので、おれみたいに大きな磯に通えない人間にとってはありがたい相手です。
メバルは本命というより、夜にフカセをやっていると外道みたいな形で食ってくる印象。狙って釣るというより「いてくれて助かる」存在で、釣れると地味に嬉しい。どの魚も食べておいしいので、釣ったあとの楽しみがちゃんと残るのもフカセのいいところです。
必要な道具
磯竿
フカセ釣りには磯竿(号数0〜1.5が入門)を使います。先調子で柔らかく、魚の引きをいなす設計です。
号数というのは竿の硬さの目安だと思ってもらえばよくて、数字が小さいほど柔らかくて細い仕掛け向き、大きいほど硬くて大きい魚向きになります。おれが最初に迷ったのもここで、汎用性を考えて1号前後を選びました。やわらかい竿は最初「頼りないな」と感じるんですが、グレの突っ込みを竿全体でぐにゃっと吸収してくれるので、細いハリスでも切られにくい。硬い竿で無理に止めようとすると、一瞬で切られてバラします。この「いなす」感覚は、実際に魚を掛けてみて初めて腑に落ちました。
シーバスロッドやサビキ竿では仕掛けのコントロールがしにくいため、磯竿専用が推奨されます。手持ちの竿で代用したくなる気持ちはわかるんですが、フカセは竿の長さと曲がり方そのものが釣りの一部なので、ここはケチらないほうが結局近道だと思います。
リール
スピニングリール2500〜3000番。フカセ釣り専用の「レバーブレーキリール」を使うと魚が突進したときにラインを出しやすく、バラシが減ります。
おれは最初ふつうのスピニングで始めたんですが、グレが横に突進したときにドラグの調整が間に合わず、何度かバラしました。レバーブレーキは指の操作でその場でラインを出したり止めたりできるので、突っ込まれた瞬間にスッと送って、落ち着いたら止める、というやり取りができる。慣れるまでは逆に難しいんですが、グレ相手だとこの一手間がバラシの数をはっきり変えます。とはいえ最初の1本目から無理に揃える必要はなくて、ふつうのスピニングでドラグをやや緩めにして始めても、十分グレの引きは味わえます。
ウキ
電気ウキではなく、「円錐ウキ(どんぐりウキ)」を使います。水の流れと一緒に流れるように設計されています。
夜釣りで使う電気ウキは縦に長くて、置きウキ的に「待つ」釣りに向いているんですが、フカセの円錐ウキは丸っこくて、潮に乗って漂うのが仕事。コマセと同じ流れにウキごと乗せていくイメージなんですよね。浮力(号数)の選び方も奥が深くて、潮が速い日や深いタナを探りたい日は少し重め、ベタ凪で食いが渋い日は軽めにして、ウキの抵抗をできるだけ消す。おれもまだ全部の号数を使いこなせているわけじゃなくて、当日の海を見て「今日はこれかな」と当てにいって、外して、を繰り返している最中です。
コマセの重要性
フカセ釣りで釣果を左右するのはコマセのコントロールです。
コマセ(アミエビ+押し麦+ペレットなど)を手のひらに取って海に投げる。このコマセの流れにハリスのエサを合わせることで、魚がエサを本物と認識して食います。コマセだけがそこにあって、ハリスのエサが別の場所を流れていたら、魚はコマセだけ食って帰っていく。だから「コマセを撒く」のではなくて「コマセとエサを同じ筋に乗せる」というのが本当の狙いなんですよね。
おれが最初にやらかしたのは、コマセをとにかくたくさん撒けば魚が寄ると思って、足元にどんどん投げ込んでいたことです。結果、エサ取りの小魚ばかり集まって、本命のグレがエサにたどり着く前に取られてしまう。撒く量も場所も、考えなしにやると逆効果になる。少し沖目に撒いて魚をそっちで足止めしておいて、足元の本命ゾーンを荒らさない、みたいな組み立てがあると後から知りました。
コマセの打ち方・量・タイミングが全部違うと釣れません。手で握る固さひとつでも変わってきて、ぎゅっと固めれば狙ったポイントまで遠投できるし、ふわっと握れば手前で広く散る。風が当日どっちから吹いているか、潮がどっち向きに流れているかで、撒く位置を毎回ずらす必要もある。これがフカセ釣りの一番難しいところで、経験を積むしかないのですが、面白さの本体でもあります。釣れない日でも「今日はコマセの位置が悪かったな」と原因が自分に返ってくるので、次への宿題が必ず残る。それがこの釣りにずっと通っている理由かもしれません。
初めてグレを釣ったとき
3回目の堤防フカセで、ウキがゆっくり沈んだ。それまでの2回はエサ取りの小さなアタリで何度もウキが揺れて、その都度ドキッとしては空振りしていたんですが、このときは違った。スッと、抵抗なく、当たり前みたいにウキが海中に消えていった。前のアタリとは沈み方の質が違うのが、なぜか手に取るようにわかったんです。合わせると「ぐっ」と重い感触と、強い横への突進。
竿先がぐにゃりと曲がって、ラインが横に走る。頭が真っ白になりながらも「竿を立てろ、立てろ」と自分に言い聞かせて、突っ込まれたらドラグを送り、止まったら巻く、を繰り返した。手が震えていたのを覚えています。竿を立てて耐えながらやり取りして、上がってきたのは28cmのグレでした。白い斑点のある黒い体。海面でギラッと身をひるがえした瞬間、思わず声が出た。タモに収まったときには膝が少し笑っていました。磯の匂いがした。手のひらに乗せると、ずっしりした重みと、ひれの硬さと、まだ暴れようとする生命力がそのまま伝わってくる。
あのやり取りの感触は他の釣りでは味わえない。サビキの数釣りや投げ釣りの「待って巻く」とは別物で、自分が組み立てたコマセとタナの答え合わせがこの1匹に詰まっている感じがした。引きの強さとタフさで、グレは「磯の王者」と言われることに納得しました。28cmなんて磯のベテランからしたら小物もいいところなんでしょうが、おれにとってはあの日のグレが今でも基準になっています。「もう一回あれを味わいたい」が、通い続ける原動力になっているんですよね。
フカセ釣りは「下手だなあ」と思いながらも通い続けています。コマセを撒く位置を間違えたり、タナが合わずに一日ボウズだったり、うまくいかない日のほうが正直多い。でも、たまにピタッと全部が噛み合ってウキが消し込むあの瞬間があるから、また竿を担いで堤防に立ってしまう。上達しないなりに、去年のおれよりは少しだけアタリが取れるようになっている気もするし、それで十分なんです。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. フカセ釣りはどんな釣り方ですか?
ウキとコマセ(まきエサ)を使い、ハリスに重りをほとんどつけずにエサを漂わせてグレやチヌに食わせる釣り方です。コマセの流れとハリスのエサを合わせるタナのコントロールが肝心で、難しいけど奥が深いです。
Q. フカセ釣りに必要な道具は何ですか?
磯竿(0〜1号)・スピニングリール(2500〜3000番)・円錐ウキ・コマセバケツ・オキアミと配合エサが基本セットです。慣れてきたらレバーブレーキリールに替えると魚をバラしにくくなります。
Q. グレとチヌはどう違いますか?
グレ(メジナ)は磯や堤防に生息して冬が旬の引きの強い魚です。チヌ(クロダイ)は港や内湾にもいて春・秋がシーズンです。どちらもフカセ釣りの代表的なターゲットです。
Q. コマセはどう準備すればいいですか?
オキアミに押し麦やペレットなどの配合エサを混ぜるのが基本です。配合エサの種類で浮力や集魚効果が変わるので、地元の釣具屋でその日の状況に合わせて選ぶのが一番確実です。
Q. フカセ釣りでよくある失敗は何ですか?
コマセのタナとハリスのエサが合っていないことが最多の原因です。コマセは打ったあとどう流れるかを観察して、エサを同じ流れに乗せることを意識するとアタリが増えてきます。