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秋の夜釣りでタチウオを狙うようになったのは、港で会ったおじさんに「今夜タチウオが入っとるよ」と教えてもらったのがきっかけです。

その日は息子の習い事の送り迎えのあと、なんとなく夜の港に車を停めて、堤防の常夜灯をぼんやり眺めていただけでした。秋の夜の港って、昼間の暑さが嘘みたいにひんやりして、潮の匂いと魚の生臭さが混ざった独特の空気が漂っているんですよね。釣りをするつもりもなく、ただその空気が好きで来たくらいの軽い気持ちでした。

そのおじさんは電気ウキでキビナゴをつけた仕掛けを投げていて、20分で3匹上げていました。オレンジ色の小さな光が水面にぽつんと浮いていて、それがすうっと沈んだ瞬間に竿をあおる。次の瞬間には、細長い銀色の魚が常夜灯の光を反射しながらバシャバシャと暴れて上がってくる。あの光景を間近で見て「あ、あれか」と思って、しばらく口を半開きにして見入っていました。

おじさんに「やってみるかい」と言われたんですが、その日は仕掛けも何も持っていなかったので、釣り方だけ根掘り葉掘り聞いて帰りました。家に帰ってからも、あの銀色がウキを沈める瞬間が頭から離れなくて。翌日には仕事帰りに釣具屋へ寄って、仕掛けを一式買いそろえていました。こういう、誰かの釣りを横で見て火がつくパターンが、おれは一番ハマりやすいみたいです。


タチウオ釣りの基本

タチウオは刀のように細長い魚で、岸から釣れる魚の中でもかなり引きが強い部類です。実際に手にしてみると、その体が本当に薄っぺらくて、まるで研いだ刀をそのまま持っているような銀色のギラつきがあります。最初に釣ったときは「魚というより金属の板が暴れている」みたいな感覚で、引きの強さと見た目のギャップに笑ってしまいました。

群れで回遊していて、時期が合えば数釣りができます。秋から冬にかけてが堤防から狙いやすいシーズンで、夜に活性が上がります。日中は沖の深いところにいるのが、暗くなるとエサを追って岸近くまで寄ってくるイメージですね。だから昼に行ってもなかなか釣れなくて、夕マズメから夜にかけてが勝負どころになります。おれが通うようになったのも、ちょうど仕事終わりの時間帯と相性が良かったからで、平日でも夜なら竿を出せるのがありがたいところでした。

そして何より、タチウオは食べると旨い。脂がしっとり乗っていて、白身なのにこってりした満足感があります。塩焼きにすればパリッと香ばしいし、ムニエルにすればバターと相性抜群、竜田揚げにすればふわっと揚がって息子がいくらでも食べる。釣って楽しい、引いて楽しい、食べて旨いと三拍子そろっているのが、おれがタチウオにすっかりハマった理由です。妻も「タチウオの日は外れがないね」と言ってくれるので、家庭内の評価も高い魚なんですよね。


仕掛けの種類

タチウオ釣りには主に3つのスタイルがあります。

電気ウキ釣り(テンヤ)

最も定番で入門向きです。電気ウキの下にテンヤと呼ばれる針のついた重りを付けて、キビナゴや切り身をセットします。ウキが沈んだら合わせる、シンプルな釣り方。

何がいいって、当たりが目で見えることなんですよ。暗い水面に浮かぶオレンジの光が、すうっと吸い込まれるように消える。その瞬間が分かりやすいので、夜釣り初心者でも「今だ」というタイミングが掴みやすい。ルアー釣りみたいに手元の感覚だけで判断する必要がないんで、最初の一匹までの距離がぐっと近くなります。おれも一番最初はこのウキ釣りから入って、ウキが沈む瞬間のドキドキで完全にやられました。

ワインド釣り

ジグヘッドに専用のワームをつけて、シャクるように動かす釣り方。アクティブに釣れます。竿をリズミカルにシャクって、ワームを左右にダートさせて誘うイメージですね。常に動かし続けるので忙しいですが、その分ハマったときの掛けた感は格別です。ただ、暗い中で一定のリズムを刻み続けるのは慣れがいるので、おれは「ウキ釣りで数を伸ばすのに飽きてきたら次に挑戦する釣り」くらいに考えています。

テンヤ(専用)

底近くを狙う釣り方で、夜のルアー感覚で使えます。ウキを使わずにテンヤそのものを投げて、底を意識しながら探っていく。サイズのいいタチウオが低い層にいるときには強いんですが、底を取る感覚や、根掛かりを避けるラインさばきが必要で、これも少し中級者寄りです。

入門にはやっぱりウキ釣りが一番わかりやすいので、最初の一本にはこれをおすすめします。釣り方を3つ並べると迷うかもしれませんが、「目で当たりが見える」というだけで夜釣りはぐっと楽になるんで、まずはウキで成功体験を積むのがいいと思います。釣り方の引き出しを増やすのは、その後でいくらでもできますから。


タックルの考え方

専用ロッドは後から考えればいいです。

これは断言できます。新しい釣りを始めるたびに専用タックルを買いそろえていたら、いくらお金があっても足りません。おれも昔は「専用じゃないと釣れないんじゃないか」と思い込んでいた時期があったんですが、結局のところ最初に必要なのは「釣れる経験」であって「最高の道具」じゃないんですよね。手持ちの竿で一匹釣れれば、それがどういう釣りなのか体で分かる。そのうえで「もっとこうしたい」が出てきてから道具を足せばいい。その順番を間違えると、使わない竿が物置に増えていくだけです。

最初はシーバスロッドやライトショアジギングロッド、磯竿などで代用できます。8〜10ftくらいの竿があればウキ釣りは問題なく楽しめます。タチウオのウキ釣りはそこまで遠投が要らないことも多いので、手元にある「そこそこ長くてそこそこ張りのある竿」なら、たいてい間に合ってしまうんです。おれも最初は持っていた長めのルアーロッドで始めて、何の不満もなく数を釣りました。

リールは3000〜4000番のスピニング。ラインはPE1〜1.5号にフロロ20〜30lbのリーダーを1〜2m。タチウオは歯が鋭いのでリーダーは太めが必須です。ここだけはケチると痛い目を見ます。せっかく掛けた良型をリーダーごと噛み切られて持っていかれると、けっこう心が折れるんですよね。おれも最初の頃に細めのリーダーで挑んで、当たりはあるのに何度もブチッとやられて、原因が分かるまでしばらく頭を抱えました。歯の鋭さを甘く見ていたんです。太いリーダーは見た目こそゴツくて気が引けますが、夜の暗がりではタチウオもそこまで警戒しないので、釣果が落ちる心配よりキャッチ率が上がるメリットのほうがずっと大きいです。


キビナゴのつけ方が釣果に直結する

タチウオのウキ釣りでは、エサのキビナゴの付け方がとても重要です。正直に言うと、これを軽く見ていた最初の頃は、隣のおじさんが入れ食いなのにおれだけ全然当たらない、という悔しい夜を何度も過ごしました。仕掛けも場所もほとんど同じなのに釣果がまるで違う。その差が「エサのつけ方」だと気づいたとき、ようやく霧が晴れた感じがしました。

ピンと真っすぐ刺さっていないと水中でくるくる回ってしまって、タチウオが食いつかない。タチウオは目がいい魚なので、エサが不自然に回転していると違和感を覚えて見切ってしまうみたいです。逆に、まっすぐ刺さったキビナゴが常夜灯の光をチラチラ反射しながらスーッと泳ぐと、それが小魚そのものに見えて一発で食ってくる。テンヤの針がキビナゴの頭と尾の2箇所に刺さるように固定して、軸に沿ってまっすぐになるよう意識します。

コツとしては、まず頭側の針をしっかり通して、そこを支点にして尾側を真っすぐ伸ばすように刺すと曲がりにくいです。キビナゴは身が柔らかいので、力任せに刺すと崩れてしまう。なるべく一発で決める気持ちで、ていねいに通すのがいい。それと、投げて回収するたびにエサが横を向いていないか確認する癖をつけると、無駄な時間が減ります。最初は暗い中で手元もおぼつかなくて、一匹つけるのに5分かかって泣きそうでしたが、慣れると1分かからずセットできるようになります。ヘッドライトを手元に当てながら、落ち着いて作業するのが結局いちばんの近道でした。


秋の群れが入ったときの爆釣感

9月下旬に入った夜でした。釣り仲間に「今日は入ってる」と連絡をもらって、夕飯をかき込んでから車を走らせて港に行ったら、常夜灯周りに20人近く並んでいました。この光景を見た時点で、もう期待で胸が高鳴るんですよね。釣り場に人が集まっているということは、それだけ釣れている証拠ですから。みんな無言で水面のウキを見つめていて、たまにどこかで「乗った」という声がして竿が曲がる。あの独特の張り詰めた空気が好きで、おれはこの瞬間のために来ていると言ってもいいくらいです。

最初の1投で30分以内にウキが沈んで、合わせたら思いのほか重い引き。竿先がグッと持っていかれて、暗い水面の下で銀色がギラッと反転するのが見える。慌てず巻き上げて、指4本(約12cm幅)のサイズが釣れました。タチウオのサイズは指何本ぶんの幅か、で測るのが定番で、指4本もあればなかなかの良型です。その手応えに「よし、今日はいける」と確信して、そこからは集中力が一気に上がりました。そのあとも2時間で10匹。

群れに当たったときのタチウオは、ほぼ毎投当たりが出る。投げて、ウキが落ち着いた頃にはもう沈んでいる、という感じで、エサをつける手が追いつかないくらいです。隣の人も向こうの人も次々に上げていて、堤防全体がお祭りみたいになる。指がエサのウロコでギトギトになって、リーダーは何度も結び直して、それでも顔がにやけて止まらない。あの爆釣感は他の釣りではなかなか味わえません。帰りの車の中で「また来週も行こう」と一人でつぶやいていたのを覚えています。まぁ、こうやって沼にハマっていくんですよね。


注意点:歯が鋭い

タチウオは口の中に鋭い歯が並んでいます。

これは脅しでもなんでもなくて、本当にカミソリみたいにギザギザの歯が生えているんです。釣り上げたあともしばらく口をパクパクさせて暴れるので、不用意に手を近づけると一発でやられます。

素手で持つと指が切れます。必ずフィッシュグリップかタオルで掴んでください。おれは最初知らなくて、上がってきたタチウオを得意げに素手で掴もうとして、指の腹をスッと軽く切りました。痛いというより、切れたことに気づくのが遅れて、暗い中で手を見たら血がにじんでいて青ざめたんですよね。それ以来フィッシュグリップを使っています。

針を外すときも油断は禁物で、口元に手を入れずに済むよう、長めのプライヤーやフォーセップを使って外すのが安全です。数が釣れる魚だからこそ、一匹ごとの扱いを雑にしないことが、結局はその夜を最後まで楽しく釣りきるコツだと思っています。指を切ってテンションが下がると、せっかくの爆釣も台無しになりますから。フィッシュグリップとプライヤーは、タチウオを始めるなら最初からセットで用意しておくのを強くおすすめします。


まぁ、楽しけりゃいいよね。


よくある質問

Q. タチウオ夜釣りの入門に一番向いている仕掛けはどれですか?

電気ウキ釣り(テンヤ)が一番わかりやすくて入門向き。ウキが沈んだら合わせるだけのシンプルな釣り方なんで、夜釣り初心者でも直感的に楽しめます。

Q. タチウオ釣りに専用ロッドは必要ですか?

最初は専用ロッドじゃなくていい。シーバスロッドやライトショアジギングロッドの8〜10ftくらいのものがあればウキ釣りは問題なく楽しめます。専用ロッドは慣れてから考えれば十分。

Q. タチウオのリーダーはなぜ太めが必要なのですか?

タチウオは歯がすごく鋭くて、細いリーダーだと簡単に切れてしまう。フロロ20〜30lbくらいの太さにしないとバイト時に噛み切られてエギが飛んでいきます。

Q. キビナゴをまっすぐにつけるのが難しいです。コツはありますか?

テンヤの針をキビナゴの頭と尾の2箇所に刺して固定するのが基本。一箇所だけだとくるくる回ってタチウオが食わない。最初は難しいけど5〜6回やれば慣れてきます。

Q. タチウオを素手で持つと危ないですか?

かなり危ない。口の中に鋭い歯が並んでいて素手で持つと指が切れる。フィッシュグリップかタオルで掴むのが絶対必要で、最初から持っておくほうがいいです。


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