車中泊釣行を本格的に始めようとしたとき、最初の壁は「車」でした。
当時乗っていた車は普通のセダンで、荷室が狭くてフルフラットにならない。荷物も積めないし、寝ることもできない。釣り場の駐車場でシートを倒して仮眠を取ろうとしたことが何度かあったんですが、ハンドルが邪魔だし、足は伸びないし、朝起きると腰がバキバキで、その日の釣りどころじゃなくなる。一度だけ後部座席を倒して斜めに丸まって寝てみたものの、結局2時間おきに目が覚めて、これは続かないなと早々に悟りました。
「軽バンに乗り換えたい」とずっと思っていたけど、新車で買うと結構な額になります。中古でそこそこの軽バンを探そうにも、状態のいい車中泊向きの一台はやっぱりそれなりの値段がついている。家計を握っているのは妻なので、いきなり「車を買い替える」とも言い出しにくい。釣りとキャンプの道具にもそれなりにお金をかけている手前、車に大金を一気に投じるのはなかなか踏み切れませんでした。
それでも、車が変われば週末の過ごし方が変わる、という確信だけはありました。問題は「どうやって無理なく手に入れるか」。そこをずっと考えていたのが、この記事の出発点です。
釣り車中泊に「軽バン」が向いている理由
釣り×キャンプ×バイクを組み合わせた週末を過ごすには、車の積載力と就寝スペースが重要です。逆に言うと、この2つを満たさない車だと、どんなに頑張っても車中泊釣行はストレスばかりが溜まります。おれが普通のセダンで挫折したのも、結局はここが足りなかったからでした。
軽バンが向いている理由は3つあります。
フルフラットにできる
ハイゼットカーゴやエブリイは後部座席を畳むとフルフラットに近い床になります。長さ180cm以上の就寝スペースが確保できる。これがどれだけありがたいか。シートを倒した斜めの床で丸まって寝るのと、平らな床で足を伸ばして寝るのとでは、翌朝の体の軽さがまるで違います。釣りは早朝が勝負なので、夜のうちにちゃんと体を休められるかどうかが、そのまま朝マズメの集中力に直結する。寝るための床が平らである、というだけのことが、釣果にまでつながってくるんです。
荷室が広い
釣り道具・キャンプ道具・バイク積込みグッズを全部積んでも余裕があります。釣り竿(5〜6本分)も室内に収納できる。セダンのときは竿を斜めに突っ込んで、ティップが助手席の足元に当たらないかヒヤヒヤしながら運んでいました。穂先は一番デリケートな部分なので、移動中にどこかへ当たって折れたら一日が台無しです。軽バンになってからは竿を室内にまっすぐ寝かせられるようになって、この「折れないかな」という小さな不安がひとつ消えました。荷物の出し入れも、立ったまま荷室を覗き込めるので腰にやさしい。これは地味だけど、年齢を重ねるほど効いてきます。
燃費が良い・維持費が安い
ガソリン代が安い。任意保険も普通車より安い場合が多い。遠征費用の節約になります。釣りもキャンプも、遠くへ行けば行くほど道具よりも先にガソリン代と高速代がかさみます。そこが軽自動車枠で抑えられると、浮いたぶんを仕掛けやエサ、あるいは次のキャンプ道具に回せる。車の維持費を絞れたぶんだけ、釣行の回数そのものを増やせるというのが、おれにとっては一番大きい理由でした。
「買う」の壁を「リース」で乗り越えた
正直、当時は軽バンを一括で買うお金がなかった。貯金を全部はたけば不可能ではなかったかもしれないけど、急な出費にも備えたいし、子どもの教育費も考えると、まとまった現金を車に消すのはどうしても怖かった。
ローンという手もありましたが、月々の支払いが高くなるし、金利のことを考えると総額がじわじわ膨らむ。電卓を叩いてみて、これは家計に響くなと一度は車の買い替えそのものを諦めかけました。
そんなときに、調べていたら「カーリース」という選択肢があることを知りました。最初は「リースって法人が業務用の車を借りるやつでしょ」くらいのイメージしかなくて、自分には関係ない世界の話だと思っていたんです。ところが個人向けのプランがちゃんとあって、しかも新車に乗れると知って、急に現実味が出てきました。
カーリースは、月々定額の支払いで新車に乗れる仕組みです。購入とは違って頭金が不要で、車検・税金・メンテナンスがコミコミのプランもあります。ここがおれにとっては一番ありがたかった。車検のたびにまとまった出費がドカンと来るのが昔から苦手で、「2年に1回の大きな山」がならされて毎月一定額になるというのは、家計を管理する側からすると本当に楽なんです。
「乗り換えのたびに売却・購入の手間がない」というメリットもあって、調べてみる価値はある選択肢でした。中古で買って数年後に売る、というのは一見お得そうに見えて、売却時の手間や買い叩かれるリスクもある。そのあたりをまるごと考えなくていいのは、車に詳しくないおれみたいなタイプには向いていると感じました。
実際にハイゼットカーゴにした理由
軽バンの候補はいくつかありました。
- ダイハツ ハイゼットカーゴ
- スズキ エブリイ
- ホンダ N-VAN
最終的にハイゼットカーゴを選んだ理由は「荷室が一番広い」からです。
ここはずいぶん悩みました。どれも軽バンとして優秀で、正直どれを選んでも大きな失敗はないと思います。でも、おれの使い方は「荷物を限界まで積んで、その上で平らに寝る」というもの。だとしたら、最後に効いてくるのは数センチ単位の荷室の余裕なんですよね。
エブリイも人気ですが、ハイゼットカーゴの荷室長(後席最大倒し時)はクラストップレベルで、長物の釣り竿が積みやすい。竿を寝かせて積むとき、ほんの数センチの差でまっすぐ入るか斜めにせざるを得ないかが変わってきます。斜めに積むと結局そのぶん他の道具を置くスペースが食われるので、長さの余裕は荷室全体の使い勝手に効いてくるんです。
N-VANは後席が跳ね上げ式で使いやすいですが、価格が少し高い。実はおれ、何年か前まではこのN-VANに乗っていたこともあって、跳ね上げの便利さは身に染みて知っています。床がフラットで荷物がたっぷり積めるいい車でした。ただ今回は、毎月の支払いをできるだけ抑えたいという家計の事情が最優先。気持ちとしては未練もありましたが、財布と相談した結果、荷室の広さと価格のバランスでハイゼットカーゴに落ち着いた、というのが正直なところです。
ここで言いたいのは、「どれが一番いいか」より「自分の使い方で何を一番優先するか」を先に決めると、車選びの迷いがすっと減るということ。おれの場合は「荷室の長さ」と「月々の安さ」でした。人によっては取り回しのよさや内装の質感かもしれません。そこが定まっていないと、スペック表をいくら眺めても堂々巡りになります。
車中泊仕様にするまで
車を手に入れた後、すぐに車中泊仕様に改造しました。といっても、いきなり完璧を目指したわけじゃなくて、まずは「一晩ちゃんと眠れる」最低ラインを作るところから始めました。完璧な内装を作ろうとして途中で力尽きる、というのが一番もったいないので、優先順位をつけてやったのが結果的に正解でした。
最初にやった3つ
- 断熱・遮光シェードを全窓に設置(夏の暑さ対策・プライバシー確保)
- フルフラット用マット設置(10cm厚のインフレーターマット)
- ポータブル電源置き場の確保(Jackery 1000 Plusが入るスペース)
シェードを全窓に付けたのは、外から車内が見えないようにするためでもあるし、何より光と温度の問題が大きい。夏は朝日が当たり始めると車内がサウナみたいに一気に暑くなって叩き起こされるし、街灯のある駐車場だと夜中ずっと明るくて寝つけない。シェードを付けてからは、外の明るさに睡眠を邪魔されることが激減しました。プライバシーが確保できると、着替えや荷物整理も気兼ねなくできるようになって、車内での過ごしやすさが段違いになります。
マットは、おれが車中泊で一番こだわった部分です。じつは過去に薄手の安いマットで失敗していて、床の硬さが背中に響いて朝には腰がやられていた。だから今回は厚みのあるものを選びました。10cmあると床のわずかな段差や荷室の継ぎ目を吸収してくれて、寝心地がまるで違う。寝具は「あとで買い替えればいいや」とケチると結局眠れずに釣りの集中力が落ちるので、最初からちゃんとしたものを入れて正解でした。
ポータブル電源の置き場を最初から決めておいたのも地味に効きました。重い機器なので、走行中に転がると危ないし、毎回適当な場所に放り込んでいると荷室がぐちゃぐちゃになる。定位置を作っておくと、積み込みのときに迷わないし、就寝スペースを圧迫しません。
荷室に板を入れてフラットにする改造(フラット化DIY)は後から追加しましたが、最初はマットだけでも十分眠れました。ここが大事なところで、全部いっぺんにやろうとすると腰が重くなって、いつまでたっても車中泊デビューできません。「まず寝られる状態」を作って一度泊まってみると、自分にとって何が足りないか、何が要らなかったかがはっきり見えてくる。改造は、実際に泊まりながら少しずつ育てていくのがおれのおすすめです。
リースのメリットとデメリット(正直に書く)
メリット
- 頭金不要・初期費用が少ない
- 毎月の支払額が明確で家計管理しやすい
- 税金・車検コミコミプランなら手間が減る
初期費用が少なくて済むのは、おれみたいに「車に大金を一気に出すのが怖い」タイプには本当に助かります。頭金を用意しなくていいぶん、浮いたお金を車中泊の装備にまず回せた。月々の支払いが一定なのも、家計を握る側からすると読みやすくてありがたい。車検の年だけ急に出費が膨らむ、というあのストレスがないだけで、釣行の計画も立てやすくなりました。
デメリット
- 契約期間中は自由に売れない
- 走行距離制限がある(月1000〜1500kmが多い)
- 改造は基本的に原状回復が必要(フラット化DIYは返却前に元に戻す)
ここは正直に書いておきます。良いことばかりじゃない。
一番気をつけたいのが走行距離の制限です。釣りやキャンプで遠征を重ねると、距離はあっという間に伸びます。おれも契約前は「月1000kmなんて余裕だろう」と思っていたんですが、いざ計算してみると、ちょっと遠くの釣り場へ月に数回通うだけで意外と削られていく。制限を超えると追加料金がかかるので、ここを甘く見ると「リースのほうが安いと思ったのに」となりかねません。
改造に原状回復が必要、というのも車中泊勢には地味に効いてきます。床に板を打ち付けるようなガッツリした内装は、返却のときに元に戻せる範囲で考えないといけない。だからおれは、最初から「ボルト穴を開けない」「置くだけ・敷くだけで完結する」方向で車中泊仕様を組みました。マットもシェードも置くだけ・はめるだけなので、これなら返却時に外せばいい。制約がある中でどう快適にするかを工夫するのも、これはこれで楽しい部分ではあります。
走行距離は毎月の釣行計画を考えると大事です。「月に何km走るか」を先に計算してから契約するのが失敗しないコツです。具体的には、よく行く釣り場までの片道距離を出して、月に何回行くかを掛けて、そこに普段使いのぶんを足す。この一手間をやっておくだけで、契約後に「思ったより走れない」と後悔する確率がぐっと下がります。
車中泊釣行のハードルは車選びだけじゃない。装備も場所も天気も、考えることはいくらでもあります。でも車が変わると、釣行のスタイルが全然変わります。前の晩から現地入りして、車の中でゆっくり眠って、誰もいない朝マズメの水辺に一番乗りする。あの静けさの中で一投目を投げる時間は、何度味わってもいい。セダンで腰を痛めながら仮眠していたあの頃には戻れません。
お金がないから諦める、で終わらせなくてよかったと心から思います。買えないなら借りる、一気にやらないなら少しずつ、と発想を切り替えたら道が開けた。完璧な車中泊仕様じゃなくても、まず一晩泊まってみれば景色が変わります。これは買って損なかった——いや、正確には借りて損なかった、ですね。まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. 車中泊釣行に軽バンが向いている理由は何ですか?
フルフラットにできて就寝スペースが確保できること、釣り道具やキャンプ道具を余裕で積めること、燃費が良くて維持費が安いことの3点が大きな理由です。
Q. カーリースと購入どちらがおすすめですか?
DIYカスタムを楽しみたいならローン購入、初期費用を抑えて月々を固定したいならカーリースが向いています。走行距離の制限があるため、毎月何km走るかを先に計算してから選ぶのが重要です。
Q. ハイゼットカーゴとエブリイどちらがいいですか?
荷室の広さを重視するならハイゼットカーゴが有利で、長物の釣り竿が積みやすいです。どちらも人気ですが、釣り×キャンプ用途では荷室長を優先するのがおすすめです。
Q. 車中泊仕様にするとき最初にやるべきことは何ですか?
断熱・遮光シェードの全窓設置、フルフラット用マットの設置、ポータブル電源置き場の確保の3つが最優先です。フラット化DIYは後から追加しても、最初はマットだけで十分眠れます。
Q. カーリースの走行距離制限が心配です。どうすればいいですか?
釣行計画から「月に何km走るか」を先に計算してから契約するのがコツです。走行距離が多い場合は距離課金型のエンキロのような選択肢も検討するといいです。