息子(小3)を釣りキャンプに連れていくと、毎回同じ問題が起きます。
「パパ、スマホつながらない」
最初にそれを言われるのは、たいてい車を停めてテントを張り始めたあたりです。荷物を下ろして、まだ汗も引かないうちに、後ろのほうから不満げな声が飛んでくる。画面の左上を見ると、アンテナのマークが立っていなかったり、立っていてもくるくる回るだけで何も読み込まれない。息子はその画面を何度も親指で引っぱって更新しようとするんですが、当然ながら何も変わらない。
山の中や河原のキャンプ場は、電波が弱い。これは行く前から分かっていることなんですが、毎回「今回は大丈夫かも」と少しだけ期待してしまう。で、毎回裏切られる。息子のスマホは格安SIMで、もともと電波が弱いエリアに入ると即アウト。家の中や駅前ではふつうに使えているから、子供は「スマホが壊れた」くらいの感覚で困った顔をする。キャンプ場についた瞬間に「つながらない」が始まって、せっかく着いたばかりで気分が高まっているところに、いきなり最初の不満がやってくるわけです。
おれ自身のスマホは大手キャリアなので、息子よりはマシなんですが、それでも谷あいの河原だと一本立つか立たないかというところ。親のほうもつながらないとなると、これはもう環境の問題で、子供のスマホをどうこうしても解決しない話だなと、何度か通って腹をくくりました。
なぜWi-Fiが必要になったか
釣りの時間は息子も楽しい。竿を握って、当たりを待って、たまに小さいのが釣れて、その瞬間は満面の笑顔です。問題はそこじゃない。釣りをしていない時間のほうなんです。
具体的に言うと、夜ご飯の準備をしているあいだ。おれが米を炊いたりおかずを作ったりしている十数分から二十分くらいのあいだ、息子は手持ち無沙汰になる。河原で石を投げるのにも飽きる。それから就寝前、寝袋に入ってから寝つくまでの時間。さらに翌朝、朝マズメを待っているあいだの薄暗い待ち時間。この三つの時間帯が、子供にとってはとにかく長い。大人なら焚き火をぼんやり眺めているだけで満たされるんですが、小学三年生にその境地はまだ無理です。持て余して、結局スマホを触りたがる。
最初のうちは「キャンプなんだからスマホ禁止」と言っていました。自然の中まで来てスマホかよ、という気持ちもあったし、たぶん多くの親が一度はそう言うと思う。でも正直、これは理想論でした。スマホを使えない不満で息子のテンションがじわじわ下がっていくと、それが翌日の釣りに影響が出る。朝、なかなか起きてこない。起きても機嫌が悪い。釣れないとすぐ「もう帰りたい」と言い出す。そして帰りの車で「次はもう行かない」と言われる。これがいちばん困る。おれは息子とこの趣味を長く続けたいわけで、一回のキャンプで「釣りキャンプ=退屈で不便なもの」という印象を植えつけてしまったら、元も子もない。
それに、これは子供の機嫌とは別の、もっと現実的な理由もあります。緊急時の連絡手段として、妻との通話や位置情報の共有が必要なんです。山奥でキャリアが圏外になると、無事に着いたという報告すらできなくなる。家で留守番している妻からすれば、夫と小さい息子が連絡のつかない山に入っているわけで、何かあったときに連絡が取れないのは普通に怖い。子供を連れていく以上、ここをおろそかにするわけにはいかない。スマホ禁止うんぬんの前に、まず通信そのものを確保しておく必要があったんです。
そこで調べ始めたのが車載Wi-Fiです。
車載Wi-Fiと普通のモバイルルーターの違い
最初は普通のモバイルWi-Fiルーターを考えていました。いわゆるポケットWi-Fiみたいなやつ。カバンに放り込んでおけばどこでも使えるイメージで、いちばん手軽だと思ったんです。
でも、ここで自分の生活を冷静に振り返ってみました。おれはポータブル電源を使い始めて五年になるんですが、そのあいだに何度も「充電し忘れて現地でバッテリー切れ」という失敗をやらかしています。スマホもそうです。釣りに夢中になっていると、気づいたら残量が二割を切っていることなんてしょっちゅう。つまり「自分で充電を管理する小型機器」というのは、おれの場合かなりの確率で当日に充電を忘れる。ポケットWi-Fiをもう一台増やしたところで、また充電し忘れる未来しか見えなかった。これは性格の問題なので、機器を増やしても直りません。
それで調べてみると、車載専用の機器は少し違うことが分かりました。
車のバッテリーに直接つなぐタイプは、スマホやモバイルルーターみたいにバッテリー切れを気にしなくていい。エンジンをかけて走っているあいだはもちろん、出発の時点でつながっていて、道中もずっとつながっている。充電のことを考えなくていいというのは、おれみたいな「うっかり充電を忘れる人間」にとっては地味だけど大きい差です。家を出る前に「これ充電したっけ」と確認する手順がひとつ消えるだけで、忘れ物の事故がひとつ減る。
KURUFiという車載Wi-Fiは、OBD2ポートやシガーソケットに挿すだけで使えて、バッテリー不要・SIM内蔵で月額料金を払えばそのまま使えるというタイプ。難しい設定や工具がいらないというのが、機械に強くないおれにはありがたかった。設置が簡単で、しかも一台のスマホだけでなく複数台を同時につなげる。これは家族で動くときには重要で、おれと息子のスマホ、それから将来的に妻も一緒に来ることがあれば、その分もまとめて面倒を見られる。一人ぶんの回線を細々と用意するより、車そのものを電波の出る箱にしてしまうほうが、家族連れには合っていると感じました。
どういう人に向くかというと、おれみたいに「車で現地まで行く」「家族や子供を乗せる」「充電管理が苦手」という三つが揃っている人だと思います。逆に、電車やバイクで身軽に動く一人キャンプなら、わざわざ車載にこだわる必要はなくて、ポケットWi-Fiのほうが取り回しがいい。要は移動手段とのセットで考える話です。
実際に使ってみてどうだったか
ハイゼットカーゴに取り付けて、次の釣りキャンプで試しました。
まず変化に気づいたのは、目的地に向かう道中です。これまでは高速を降りて山道に入っていくと、だんだん電波が細っていって、息子が後部座席で「もう見れない」と言い出すのが定番だったんですが、その日は山に入っても普通に動画が流れ続けていた。「あれ、まだつながってる」と息子のほうが先に気づいて、ちょっと驚いていました。現地に着いて、いつもなら一番に「つながらない」が来るはずのタイミングでも、何も言ってこない。荷下ろしのあいだ、後ろで普通にスマホをいじっている。あの毎回の「パパ、スマホつながらない」が、その日は一度も発生しなかった。
正直、これは拍子抜けするくらいあっさりした変化でした。でも、その「何も起きない」ことのありがたさが、子供連れには大きい。トラブルがひとつ消えるというのは、親の気持ちの余裕にそのまま直結します。最初の不満がないと、その後の流れ全体が穏やかになる。息子の満足度というか、その日全体の機嫌の底が、目に見えて上がっていました。
夜、テントの中での出来事もよく覚えています。ランタンの灯りの下で、息子が寝袋にくるまってYouTubeを見ている。しばらくして、ふいに「明日何時に起きる?」と聞いてきました。朝マズメに合わせて「五時」と答えると、「分かった」と素直に言って、それから少しして画面を消してすんなり寝た。これは正直、意外でした。おれは「スマホを見せたら興奮して寝なくなる」と思い込んでいたんですが、実際は逆だったんです。やりたいことをやって満足した後のほうが、子供はあっさり眠りに落ちる。むしろ「スマホ取り上げられた」という不満を抱えたまま寝袋に入ると、その不満が頭に残って、もぞもぞしてなかなか寝ない。動画を見せたほうが就寝がスムーズというのは、自分の予想とは真逆の発見でした。
もちろん、これがどの家庭にも当てはまるとは言いません。子供の性格にもよるし、見せる時間に区切りをつける工夫は要ると思う。ただ、うちの場合は「禁止して我慢させる」より「短く満足させて切り上げる」ほうが、結果として早く寝てくれて、翌朝も機嫌よく起きてくれた。これは何度か通って確かめた実感です。
ポータブル電源との組み合わせ
ここでひとつ、正直に書いておかないといけない弱点があります。車のエンジンを切った後は、車のバッテリーから給電するタイプは使えなくなる、ということです。これは便利さの裏返しで、車から電気をもらっている以上、エンジンを止めれば供給も止まる。当たり前といえば当たり前なんですが、最初はここを甘く見ていました。
何が問題になるかというと、テントを張って、夜になって、車のエンジンを切って、いざ寝る前にスマホをいじろうとしたタイミングです。日中ずっとつながっていたから油断していると、夜になって急に「あれ、つながらない」が戻ってくる。バッテリー上がりが怖いから、夜通しエンジンをかけっぱなしにするわけにもいかない。アイドリングは燃料ももったいないし、キャンプ場によっては騒音や排気の問題でマナー的にもよろしくない。だから「エンジンを切っている時間帯はどうするか」というのは、車載Wi-Fiを使うなら最初に考えておくべき点でした。
おれの場合の答えが、ポータブル電源です。もともと車中泊と釣りで五年使ってきた道具なので、これを電源として併用する。テントサイトでも、ポータブル電源があれば別途ルーターやスマホに充電しながら使える。エンジンを切った後の夜の時間帯は、ポータブル電源側でまかなう、という役割分担です。車載Wi-Fi単体で完結すると思っていると夜にハマるので、電源とセットで考えるのが現実的だと思います。
息子と釣りキャンプを続けるために
子供を連れていくキャンプは、大人だけのときと要求が変わります。
おれは釣り歴だけは十年以上あって、もともとは一人で河原に立って、誰にも気をつかわず竿を出すのが好きでした。当たりだけに集中して、何時間でも黙って待っていられる。その「釣り一本集中」の楽しみ方が、自分にとってのキャンプの基本形でした。でも息子を連れていくようになって、その形をそのまま持ち込むことはできないと分かった。子供は子供のペースがあって、退屈にも弱いし、不便にも弱い。親が満足している時間が、子供にとっては苦行になっていることがある。
ここで難しいのは、じゃあ「子供がいると釣りに集中できないから連れてくるな」という話なのかというと、それは違う、ということです。おれが本当にやりたいのは、息子と一緒にこの遊びを続けることであって、一人の集中を守ることではない。だとしたら、調整するのは当然おれのほうです。息子が退屈しないように、不便で機嫌を損ねないように、先回りして手を打っておく。それで息子が帰りの車で「次もまた行きたい」と言ってくれるなら、おれの集中が多少削れることなんて、安いものです。
その「先回りの手」のひとつが、今回のWi-Fiでした。たった一つの道具で、毎回の「つながらない」問題が消えて、夜の寝かしつけまで楽になって、息子の機嫌の底が上がる。緊急時の連絡手段も確保できる。子供連れの釣りキャンプを長く続けるための投資だと思えば、これは買って損なかった一つです。
まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. 子供がキャンプ場でスマホがつながらないと言います。どう解決しましたか?
車載Wi-Fiを導入しました。KURUFiはOBD2ポートに挿すだけで使えて、バッテリー不要・SIM内蔵です。現地に着いてもそのままつながっているので「つながらない」が発生しなくなりました。息子の満足度が全然違います。
Q. 車載Wi-Fiと普通のポケットWi-Fiはどちらがキャンプ向きですか?
車載Wi-Fiの方がキャンプ向きだと思います。車のバッテリーにつなぐタイプはスマホみたいにバッテリー切れを気にしなくていい。ドライブ中から到着後まで継続してつながっているのが便利です。ただし車のエンジンを切ったあとはポータブル電源を使う必要があります。
Q. 山奥のキャンプ場でも車載Wi-Fiはつながりますか?
電波の届く場所なら大丈夫です。完全な電波圏外では厳しいですが、山の中や河原でも「圏外」というよりは「電波が弱い」場所が多いです。車載Wi-Fiは複数回線を束ねるものもあるので、格安SIM単体より安定することがあります。
Q. キャンプでポータブル電源は必要ですか?
子供連れなら便利です。スマホ充電、ランタン、扇風機など1台でまかなえます。1000Wh以上あれば親子2人の1泊は余裕です。車のエンジンを切った後の電力確保にもなります。
Q. 子供に「キャンプ中スマホ禁止」は正解ですか?
おれは最初そうしていましたが、スマホが使えない不満で息子のテンションが下がって翌日の釣りに影響が出ました。夜に動画を見た後の方がむしろ就寝がスムーズで、翌朝の朝マズメにも素直に起きてくれます。完全禁止より使える状態にして他の楽しさを増やす方がうまくいきました。