堤防でマダイを釣るという発想、最初はなかったです。
マダイといえば「船釣り」「タイラバ」「コマセ船」というイメージが強くて、堤防から狙えるとは思っていなかった。高い遊漁料を払って沖に出て、深場を狙ってようやく一枚——そういう特別な魚だと思い込んでいた。だから足元の堤防でアジやサバを釣りながら、マダイは別世界の魚だと、勝手に線を引いていたんです。
その線を引き直してくれたのが、いつも同じ場所に座っている港の常連おじさんでした。「ここは潮が走るときに大型も出るよ」とぽつりと言うのを聞いて、最初は半信半疑だった。こんな見慣れた堤防で本命が出るわけがないと。でも、長く同じ場所に通っている人の一言って、妙に重みがある。実際におじさんのクーラーを覗かせてもらったとき、考えが変わりました。試してみる価値はあるな、と。
正直に言うと、最初の数回は何も起きませんでした。アジ釣りの片手間で仕掛けを垂らしているだけだったから、本気度が足りなかったんだと思います。でも、ちゃんと条件を意識して通うようになってから、景色が変わってきた。その話を順番に書いていきます。
堤防でマダイが釣れる条件
すべての堤防で釣れるわけではないです。ここを勘違いしていると、いくら通っても坊主が続いて、「やっぱり堤防マダイなんて無理だ」と諦めることになる。おれが最初にやらかしたのが、まさにこれでした。近所の港内の堤防で何度も粘って、一度もアタリがなかった。場所が間違っていたんです。
マダイが回遊してくる堤防には、ある程度の共通点があります。逆に言えば、この共通点を満たさない堤防では、どれだけ腕を磨いても本命は出にくい。だから道具より先に「場所選び」を覚えるのが近道だと、痛い目を見てから思うようになりました。
潮通しが良い
外洋や湾口に近い堤防は、潮が動くときに青物やマダイが回遊することがある。港内の奥まった堤防では難しい。判断の目安は、海面を見て潮目や流れの筋が見えるかどうか。水面がのっぺりと止まっているような場所は、たいてい潮が動いていない。逆に、足元のウキやラインが横に引っ張られて、コマセを撒くとサーッと流されていくような堤防は期待が持てる。マダイはエサが流れてくる潮の道に乗って回遊してくるので、その道が通っているかどうかが第一条件になります。
水深がある
堤防先端や外側で水深10m以上あると、コマセが沈んでいく過程でマダイのタナに届きやすい。水深が浅いとコマセが広がりにくい。なぜ水深がいるかというと、マダイはわりと警戒心が強くて、人の気配がする浅場の足元までは、明るい時間帯だとなかなか上がってこない。ある程度の水深があると、底付近にコマセの帯ができて、その煙幕の中でマダイが安心してエサを拾う。仕掛けを下ろしてみて、底を取るまでにずいぶん時間がかかるなと感じる場所は、それだけで一つ条件をクリアしていると考えていいです。
底が砂地・砂礫
泥底よりも砂地・砂礫底はマダイが好む。地形が分かれば狙い目が絞れる。どうやって底の質を知るかというと、一番手っ取り早いのはオモリを着底させたときの感触です。ズンと重く沈むだけの泥底と、コツコツと小さく当たりながら止まる砂礫底では、手元に返ってくる振動が違う。何度か底を取っているうちに、なんとなく地形が頭の中で立体的に見えてくる。そうなると、同じ堤防でも「この辺は砂地でマダイが寄りそうだ」と狙い目が絞れるようになります。最初は分からなくて当然なので、まずは底を取る作業を丁寧にやることから始めるといいです。
この三つが揃っている堤防は、地図やネットでいくら探しても出てこないことが多い。結局おれの場合は、常連おじさんの一言と、自分の足で何度も底を取って確かめたことで、ようやく「ここなら出る」という場所が見つかりました。遠回りに見えて、これが一番確実だと思っています。
堤防コマセマダイの仕掛け
基本はビシを使ったコマセ釣りです。
仕掛けの構成
- 竿: 3m前後の磯竿3〜4号(オモリ負荷40〜60号)
- リール: スピニング 3000〜4000番
- 道糸: PE 2〜3号
- ビシ: プラビシ(60〜80号)
- ハリス: フロロカーボン 3〜4号、2〜3m
- ハリ: チヌ3〜4号 または グレバリ5〜6号
コマセの作り方
市販のアミエビ(冷凍ブロック)をバケツで解凍して、集魚材を混ぜる。集魚材はマダイ用のものが売っている。硬すぎると出ない、柔らかすぎるとすぐ出て終わる。適度な固さに調整する。
ここの「適度な固さ」が、言葉で書くと簡単なんですが、最初はまったく分かりませんでした。おれの失敗は、現場で冷凍ブロックがまだ半分凍ったまま釣りを始めてしまったこと。芯が残っていると、ビシをしゃくってもコマセがほとんど出ない。それなのに自分は「撒いている」つもりでいるから、いつまでもアタリが来なくて首をかしげる、という間抜けな時間を過ごしました。今は前日の夜のうちにバケツに移して、解凍を進めておくようにしています。冬場なら現場に着いてからでも、日が当たる場所に置いておけば釣り始めには使えるようになる。
固さの目安は、手で握ってみて、ゆっくり押し出せばボロッと崩れて、放っておけば形が残るくらい。シャバシャバの水っぽい状態だと、一回しゃくっただけで全部出尽くして、すぐに撒くものがなくなる。逆にカチカチだと、しゃくっても煙幕が出ないので魚が寄らない。集魚材は一気に入れず、少しずつ混ぜながら様子を見るのがコツです。海水を足して柔らかさを微調整できるので、迷ったら少し硬めに作って、現場で水を足していくほうが失敗が少ないと思います。
刺しエサ
オキアミの尾羽を切ってまっすぐ刺す。丸めて刺さない。マダイは刺しエサをじっくり見てくることが多いので、自然に見せる刺し方が大事です。
なぜ丸めて刺さないかというと、コマセのアミエビと一緒に漂っているとき、刺しエサだけ不自然な形をしていると、警戒心の強いマダイはそこだけ見切ってしまうからです。アジやサバは多少雑に刺してもガツガツ食ってくるけど、マダイはそうはいかない。実際におれも、隣で同じコマセを撒いているのに、刺しエサが曲がって団子になっていた日は、見事にアタリが遠かったことがあります。尾羽の硬い部分をハサミで切り落として、そこから針を入れて、エビがまっすぐ一本になるように背中側に針先を抜く。海中でアミエビの煙の中に、本物の一匹がそっと混じっている——そういう絵を頭に描きながら刺すと、自然と丁寧になります。地味な作業ですが、ここを横着すると一日が変わると思って手を抜かないようにしています。
釣り方の基本
タナの取り方
底から2〜3mが基本タナです。着底したらリールを2〜3回巻き上げてタナを決める。ビシを2〜3回しゃくってコマセを出し、静止させて待つ。コマセが出た後、刺しエサが漂っている状態を作るイメージ。
ここで大事なのが、コマセが出ている層と、刺しエサがある層を重ねることです。ビシからこぼれたアミエビは、潮に乗って少しずつ下に流れていく。だから刺しエサは、コマセより少し下、ちょうど煙幕が降りてくる位置に置いてやると、エサを追ってきたマダイの目の前に自然に入る。おれは最初、ただ底にエサを置いて待っているだけで、コマセとエサがバラバラの層になっていた。煙幕は上、エサは底——これだと魚は煙幕に寄っても、肝心の針には食いつかない。しゃくる回数と巻き上げる回数を毎回同じにして、層を一定に保つと、釣れるパターンが見えてきます。
待つときは、竿先をぼんやり見ているのではなく、海中で何が起きているかを想像する時間だと思っています。煙幕がふわっと広がって、その中をマダイが横切る——そんな絵を頭に浮かべながら待つと、不思議と集中が切れない。アタリのない時間って退屈で、つい仕掛けを上げたくなるんですが、そこで動かしすぎると刺しエサが不自然になる。じっと待てるかどうかが、地味に効いてくる部分だと感じています。
アタリと合わせ
マダイのアタリは「ゴン」という力強い引きか、「モゾモゾ」という食い込みの前兆。前アタリがあったら少し送り込んで飲み込ませてから、しっかり合わせる。空バリが多い場合は、合わせが早すぎることが多い。
このタイミングの感覚が、堤防マダイで一番難しいところだと思います。アジ釣りの癖で、おれは最初、竿先がモゾッと動いた瞬間に反射でビシッと合わせていました。結果は見事に空振りの連発。マダイは刺しエサをいきなり丸呑みするんじゃなくて、まず口先で確かめるように突いてくる。その「モゾモゾ」で合わせると、まだ針が口の中に入っていないから抜けてしまうんです。
だから前アタリが出たら、ぐっとこらえて少し竿を送り込んでやる。穂先が「ゴンッ」と本気で持っていかれるのを感じてから、はじめて大きく合わせる。頭では分かっていても、いざ前アタリが来ると体が勝手に反応しそうになる。ここをこらえられるようになると、空バリがぐっと減ってきました。焦る気持ちとの戦い、と言ってもいいかもしれません。
取り込み
マダイは走る魚です。最初の突っ込みをドラグで逃がして、頭を上に向けてから巻き取る。無理に巻くと口が切れてバレる。特に3kg以上の大型は焦らず時間をかける。
これも一度バラして覚えました。良型がかかって舞い上がって、早く顔を見たくて力任せにゴリ巻きしたら、最後の最後で「フッ」と軽くなった。口が切れてバレたんです。あのときの脱力感は今でも忘れられない。それ以来、マダイがかかったらまず深呼吸して、ドラグを信じることにしています。
マダイは最初に下へ下へと突っ込む。ここで止めようとすると、太いハリスでも口が切れる。だから最初の突っ込みは、ドラグをジリジリ鳴らしながら走らせて、相手が疲れるのを待つ。突っ込みが止まって頭がこちらを向いた瞬間に、ポンプのように竿を起こして巻き取る。下を向かせたまま無理に巻かない、これが鉄則です。堤防だと足元のテトラや壁にハリスを擦られるリスクもあるので、最後は竿で魚を壁から離す意識を持つ。中型でも引きは強烈なので、大型なら本当に焦らず、何分かけてもいいくらいの気持ちでやり取りするのがちょうどいいと思います。
このやり取りを竿に任せられるかどうかは、けっこう竿選びにかかってきます。先の構成で書いた3m前後の磯竿3〜4号は、重いビシをしゃくれる強さと、マダイの突っ込みを胴で吸収してくれる粘りのバランスがいい。硬すぎる竿だと突っ込みを弾いて口切れしやすく、柔らかすぎるとビシが扱いづらい。一本目に何を買えばいいか迷ったら、この番手を選んでおけば堤防コマセでまず外しません。
やってみて分かったこと
潮が走っているときは本当に釣れます。最初の一枚は30cmの中型でしたが、引きは全然違う。アジやサバとは別の感触。竿先が一瞬で海面に突き刺さって、ドラグがジッと鳴った瞬間、「あ、これは違う魚だ」と手のひらに伝わってきた。ピンクと銀の体が水面でひるがえったときは、思わず声が出ました。「これがマダイか」と。あの一枚で、堤防マダイにすっかりハマってしまった気がします。
ただ、釣れる条件が揃わないと全然アタリがない日もある。空振りで終わることは普通にあります。そこは覚悟が必要です。むしろ釣れない日のほうが多いくらいで、潮が動かない凪の日に半日コマセを撒き続けて、クーラーが空っぽのまま帰ったことも何度もある。そういう日は正直しんどい。でも、堤防マダイは「いつでも釣れる魚」じゃないからこそ、条件が噛み合って一枚出たときの嬉しさが大きいんだと思います。アジやサバが数釣れる楽しさとは、また別の満足感がある。
向き不向きで言うと、コツコツ数を釣りたい人より、「滅多に出ない本命を堤防から狙う」という過程を楽しめる人に向いている釣りだと思います。アタリのない時間に耐えられるか、そこが分かれ目かもしれません。
道具の準備という意味では、思っていたよりハードルは低かったです。コマセの準備(解凍・混合)が少し手間ですが、前日に仕込んでおけばそれほどでもない。バケツとエサを持っていくだけで、あとは普通の堤防釣りと同じ。船を予約して遊漁料を払って、という大がかりさがないぶん、思い立った週末にふらっと挑戦できる。足元の見慣れた堤防が、急に「本命の釣り場」に変わる感覚は、やってみないと分からない面白さだと思います。
まぁ、楽しけりゃいいよね。
よくある質問
Q. 堤防からマダイを狙えるのはどんな場所ですか?
潮通しが良くて水深10m以上ある外洋や湾口に近い堤防が狙い目。港の奥まった場所や水深が浅い堤防は難しいので、釣り場選びが一番重要です。
Q. コマセの固さはどう調整すればいいですか?
硬すぎるとビシから出ない、柔らかすぎるとすぐに出尽くしてしまう。バケツで混ぜながら「ゆっくり押し出せる固さ」を目安に調整するといい。集魚材を少しずつ混ぜながら様子を見るのが正解。
Q. マダイのアタリはどんな感触ですか?
「ゴン」と力強い引きか、最初は「モゾモゾ」という小さな前アタリで来ることが多い。前アタリのあとは少し送り込んで飲み込ませてからしっかり合わせる。空バリが続くなら合わせが早すぎるはずです。
Q. 堤防コマセ真鯛釣りに向いている竿は何ですか?
3m前後の磯竿3〜4号(オモリ負荷40〜60号)が基本。コマセ釣りで重いビシを使うので、それに対応できる胴調子の竿を選ぶと使いやすいです。
Q. マダイが釣れずに終わる日は多いですか?
条件が揃わないと本当にアタリがない日もある。潮が走っていない日・水温が合わない日は難しい。それでも潮が動いたときは本番という感じで待つのが堤防コマセ釣りのスタイルです。