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「釣りを教えてあげる」という気分で連れて行ったのに、気づいたら完敗していました。

息子が小学3年生になった春、「釣りに行きたい」と言い出したので、近場の管理釣り場へ連れて行きました。きっかけは、おれが車に積んだロッドケースをいじっているのを横で見ていた息子が「それ何釣るやつ?」と聞いてきたことです。普段は釣りの道具なんてまったく興味なさそうだったのに、その日はやけに食いついてきた。ケースのファスナーを開けて中のロッドを見せたら、目をまんまるにして「これで魚が釣れるの?」と。「魚が釣れるやつだよ」と言ったら「おれもやりたい」と。子どもの気が変わらないうちにと、週末すぐ予定を組みました。子どものこういう「やりたい」は、寝て起きたら消えてることが多い。だから鉄は熱いうちに打て、で動いたわけです。

正直、内心では「教える側」のつもりで意気込んでいました。ニジマスなんて管理釣り場に行けば誰でも釣れる魚だと思っていたし、息子が一匹も釣れずにつまらなそうにしたらどうフォローしようか、なんてことばかり考えていた。「最初は釣れなくても、お父さんが横で釣ってみせて、それを見て覚えればいいか」くらいに構えていたんです。「初心者だし、最初は釣るのが大変かも」と心配していたのは、完全におれの方だったわけです。

あの朝、車のなかで「お父さんが手本見せるからな」なんて言っていた自分を、いま思い返すと笑ってしまいます。助手席の息子は窓の外を見ながら生返事で、たいして聞いていなかった。釣り場に着くまでの道のりで、おれは頭のなかでリトリーブの説明をどう噛み砕くか、根掛かりしたときのフォローをどうするか、そんなことばかりシミュレーションしていた。教える気まんまんだったんです。そのシミュレーションが、ものの30分で全部いらなくなるとは思ってもいませんでした。


当日の記録

息子の使った仕掛け:貸し竿・管理釣り場専用ルアー(スプーン)

やまちゃんの仕掛け:自分のタックル(ダイワ プレッソ + フロロ2lb)

釣果:

  • 息子 7匹
  • やまちゃん 4匹

2時間の釣行で、3匹差で完敗。

最初の1匹は、おれが釣りました。スプーンを投げて巻いてきたら、足元でグッと重くなって、銀色のニジマスが水面を割って跳ねた。「ほら、こうやって釣るんだぞ」と得意げに息子に見せて、針を外して逃がしてやった。あのときはまだ余裕だったんです。横で息子は貸し竿を握ったまま、見よう見まねでスプーンを巻いていた。竿の持ち方もぎこちないし、ルアーの動かし方も教えた通りにはなっていない。「最初はこんなもんだよな」と内心思っていました。

ところが、その息子が2投目か3投目で1匹釣った。まぐれだと思った。でも、そのあともポツポツと釣り続ける。おれが次の1匹を釣るまでの間に、息子は2匹追加していた。気づけば後ろから足音のように数が迫ってきて、追いつかれ、追い越され、最後は背中も見えないくらい離されていた。水面のあちこちでニジマスがライズしていて、コンディションは決して悪くなかった。それなのにおれの竿には反応が乏しい。同じ池で、同じ魚を狙って、隣に立っているのに、この差は何なんだ——と。


なぜ負けたのか

最初は「子どもが釣れてよかった」と余裕を見せていた。でも息子の方が早いペースで数が増えていって、気づいたら追い越されていた。

「なんで?」と思いながら息子の釣り方を観察してたら、単純な話でした。

息子はスプーンをゆっくり一定のスピードで引いていた。竿先はほとんど動かさず、リールのハンドルを同じリズムでくるくる回しているだけ。手前まで引いてきて、また投げて、また同じスピードで巻く。それの繰り返し。「どうやって動かすの?」と聞いたら、不思議そうな顔で「ゆっくり引いてるだけ」と言った。本人にしてみれば、それ以外にやりようがないわけです。

一方のおれは「変化をつけた方がいい」と思って、速くしたり遅くしたり止めたり——を繰り返していた。ちょっと巻いてはトゥイッチを入れ、フォールで食わせの間を作り、リトリーブのスピードを段階的に変えて……と、頭のなかにある引き出しを片っ端から開けていた。長く釣りをやっていると、つい「ひと工夫」を入れたくなる。何もせずただ巻くだけ、というのが手持ち無沙汰で落ち着かないんです。

でも、これが裏目に出た。管理釣り場のニジマスは養殖魚なので、スプーンの動きに「慣れていない」素直な魚が多い。一定のスピードでまっすぐ泳いでくる小さな金属片に、何の警戒もなく口を使う。そこに余計な緩急をつけると、魚の追い方のリズムが狂って、口を使う寸前で見切られてしまう。つまり、おれの「経験からくる工夫」が、ここではそのまま邪魔になっていた。よかれと思ってやっていることが、釣れない原因そのものだったわけです。

子どもは「うまくやろう」という意識がない分、シンプルな動作を一定で続けられる。余計なことを知らないから、余計なことをしない。それが管理釣り場では強みになっていた。頭でっかちになって自分から答えを難しくしていたのは、間違いなくおれの方でした。隣で淡々と巻いている息子の手元を見ながら、「ああ、釣りって知識が多ければ多いほど強いわけじゃないんだな」と、地味に効く一発を食らった気分でした。


管理釣り場は大人にも難しい

この体験から、管理釣り場を「簡単に釣れる場所」と思っていた自分を反省しました。

確かに釣れやすい環境ではある。子どもでも釣れるし、ボウズで帰ることはまずない。でも、それは「いちばん簡単な釣り方をすれば」という条件付きの話です。突き詰めようとすると、スプーンのウェイト選び・カラーローテーション・リトリーブのリズム・レンジ(泳がせる深さ)の調整など、考えるべき変数がどんどん増えていく。1.5gで表層をなぞるのか、2.5gで一段沈めてから引くのか。同じピンクでも明るい色か濃い色か。巻きスピードを少し落とすだけで反応が変わったりする。手を変え品を変え、その日の魚の機嫌を探っていく作業は、海のライトゲームとまったく同じ思考です。

だから皮肉なもので、「とにかく数を釣る」だけなら子どものシンプルな釣りが強いのに、「狙ったレンジで・狙ったサイズを・自分の組み立てで釣る」ところまで欲を出すと、急に難しくなる。そこに足を踏み入れた瞬間から、管理釣り場は奥行きのある釣り場に変わるんです。

おれ自身、この日をきっかけに「練習場」としての見方が変わりました。アジングやメバリングといったライトゲームの、巻きのリズムや小さなアタリの取り方を養殖魚相手に磨ける。風や潮に左右されにくく、魚の数も多いから、純粋に「自分の操作と魚の反応」の関係だけに集中できる。「ライトゲームの基礎を磨く練習場」として、管理釣り場は実は玄人にも向いている場所です。負けた悔しさをこういう前向きな理屈で消化しているだけ、と言われたら否定はできませんが。


息子がハマった話

その日から息子が「また行きたい」と言うようになりました。

帰りの車のなかで、ずっとその日の自慢話をしていた。「最後のやつ大きかったよね」「お父さんより釣ったもんね」と、得意げに何度も繰り返す。普段は学校の話なんてほとんどしない子が、釣りのことだけはこっちが聞かなくてもしゃべる。負けたおれとしては複雑ですが、これだけ食いついてくれるなら、また連れて行こうという気になります。妻に「どうだった?」と聞かれて、息子が真っ先に「お父さんに勝った!」と報告したときは、さすがに苦笑いするしかなかった。

翌月また行って、息子はスプーン以外にも挑戦して、クランクベイトで釣ることもできた。前回はずっとスプーンを巻くだけだったのが、「これ投げてみたい」と自分から別のルアーに手を出すようになった。子どもの吸収の早さには毎回おどろかされます。一度コツをつかむと、おれが何も言わなくても勝手に試行錯誤を始める。失敗しても気にせず投げ続けるから、結果的にどんどん上達していく。大人は「これは釣れなさそう」と頭で判断して手を止めてしまうけど、子どもにはその引き算がない。これも、ある意味で子どもの強さなんだろうなと思います。

「お父さん、何匹釣れた?」「5匹」「おれ6匹!」という会話を繰り返しながら、気づいたら家族で月に1回の定番になってきてます。最初は息子の「やりたい」に付き合っただけのつもりが、いつのまにか家族の予定にがっちり組み込まれていた。前の晩から息子がルアーケースをいじって「次はどれで釣ろうかな」と考えているのを見ると、ああ連れて行ってよかったな、と素直に思います。

釣りを通じて息子と過ごす時間は、釣れる釣れないより大事だなと感じます。とはいえ、次こそは数で勝ちたいというのが本音で、こっそりスプーンを買い足してみたり、巻きスピードを練習してみたりしている自分がいる。親のくせに、本気で子ども相手にリベンジを狙っているわけです。まぁ、楽しけりゃいいよね。


Q&A よくある質問

Q. 子どもを管理釣り場に連れて行く年齢は何歳から?

A. 5〜6歳から可能なところが多いです。保護者同伴でルアーを使わせてもらえる施設が多い。仕掛けの準備は大人がやる前提で、子どもは「巻く」だけに集中させると最初は成功しやすい。

Q. 管理釣り場の料金はどれくらいかかりますか?

A. 大人2,000〜4,000円・子ども1,000〜2,000円(2〜3時間)が一般的な相場です。釣った魚を持ち帰る場合は持ち帰り料が別途かかる施設もあります。

Q. 管理釣り場でよく釣れるルアーは何ですか?

A. スプーン1.5〜2.5gが定番で、最初はこれだけで十分です。カラーはゴールド・シルバー・ピンク・グリーンを揃えておくと状況変化に対応できます。

Q. 釣れた魚は持ち帰れますか?

A. 施設によります。「釣り放題・持ち帰り別料金」「釣った分だけ精算」など様々。事前に確認してから行くのが確実です。


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