朝マズメの釣りを終えて、焚き火の前で飲む一杯のコーヒーが好きです。
4時に起きて薄暗い中を釣り場に行って、1〜2時間釣りをして戻る。キャンプに帰ってきて、残った炭か枝で焚き火を起こして、お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。その時間が、釣りキャンプの中で一番好きな瞬間かもしれない。
4時の闇はまだ夜の続きみたいな色をしていて、ヘッドライトの光の輪の中だけが世界の全部になる。釣り場に着く頃にようやく空の端がうっすら白んできて、水面に最初の魚のライズが出るのを待つ。その時間帯の集中は嫌いじゃないけど、正直に言うと、おれの体は釣りそのものより「終わったあとの一杯」を目当てに動いている気もする。釣果がよくても悪くても、戻ってきてコーヒーを淹れる時間は約束されているから、釣りが空振りでもがっかりしすぎずに済む。これは結構大事なことで、釣りだけを目的にすると坊主の日はただただ落ち込むけど、コーヒーを後ろに置いておくと、朝マズメは「ついで」みたいな気楽さで通える。まぁ、楽しけりゃいいよね、という感覚に近い。
それに、釣りから戻る道のりがまたいい。手も顔も冷えきって、足元の露で靴の先が濡れて、テントに近づくと昨日の焚き火の残り香がふわっと鼻に届く。あの匂いを嗅いだ瞬間に「あ、これからコーヒーの時間だ」とスイッチが入る。淹れる前の、あの待ちの時間まで含めて好きなんだと思います。
フィールドでコーヒーを飲む方法
キャンプでコーヒーを飲む方法はいくつかあります。
- ドリップバッグ(手軽・かさばらない)
- コンパクトフレンチプレス(コスパいい・後片付けが少し手間)
- アウトドア用エスプレッソメーカー(本格・荷物が増える)
- カプセル式コーヒーメーカー(手軽・一定の品質)
どれが正解というのはなくて、その日の荷物量と「どこまで手間をかけたい気分か」で決めればいいと思っています。林道の渓流に軽バンで乗りつけて、ちょっと釣ってすぐ撤収みたいな日はドリップバッグ一択。逆に車中泊でゆっくり二泊する予定の日は、荷物に余裕があるからカプセル式を積んでいく。同じ「キャンプのコーヒー」でも、その日の過ごし方によって最適解が変わるんですよね。
長い間ドリップバッグを使っていましたが、毎回味にばらつきがあって不満でした。お湯の温度も、注ぐ速さも、その日の手の冷え具合で変わる。寒い朝に手がかじかんでいると、ついドバドバ注いでしまって薄くなる。逆に丁寧にやろうとしすぎると、湯がぬるくなって香りが立たない。淹れるたびに「今日のはちょっと違うな」と思うことが多くて、せっかくの一杯がギャンブルみたいになっていました。
カプセル式に変えてから、毎朝同じ品質で飲めるようになって気に入っています。眠くて頭が回らない朝でも、ボタンひとつで昨日と同じ味が出る。この「失敗しない安心感」が、思っていた以上に朝の体に優しい。釣りで早起きして疲れている朝こそ、頭を使わずに美味い一杯にありつけるのはありがたいです。ただ、ドリップバッグを完全にやめたわけではなくて、荷物を削りたい日のために今でも何袋かは必ず車に積んでいます。両方を使い分けるのが、おれの今の落としどころです。
カプセル式コーヒーのキャンプでの使い方
カプセル式コーヒーメーカーは電源が必要ですが、ポータブル電源があれば問題ありません。
消費電力は1300〜1500Wが多いので、ポータブル電源の出力確認が必要です。ここで気をつけたいのは、容量(Wh)だけでなく定格出力(W)も見ること。容量が大きくても定格出力が足りないと、スイッチを入れた瞬間に保護機能が働いて止まってしまう。コーヒーメーカーは加熱のために一気に電力を食うので、出力に余裕のあるモデルを選ぶと安心です。500Wh以上のポータブル電源なら、1〜2泊の釣りキャンプで十分使えます。コーヒー一杯を淹れるのに使う電力はほんの一瞬なので、容量が減るのを心配するより、定格出力が足りているかを先に確認した方がいい。
おれが最初にやらかしたのは、出力ギリギリのモードのまま使おうとして、メーカーが起動せずに「なんで動かないんだ」と寝起きの頭でしばらく悩んだことです。説明書を読み返したらモードの切り替えが必要だっただけで、原因が分かってみればなんてことなかった。だけど薄暗いテントの前で、コーヒーを飲みたいのに飲めないあの数分は地味につらい。それ以来、前の晩のうちにポータブル電源の出力モードを確認しておく癖がつきました。朝の自分は寝ぼけていて頼りにならないので、段取りは前夜の自分に任せるに限ります。
カプセルは複数の種類を持っていけて、その日の気分で選べる。これがカプセル式の地味に大きいメリットで、深煎りの苦いやつ、浅煎りのすっきりしたやつ、デカフェまで、小さな箱に入れて何種類も持ち運べる。冷え込んだ朝は濃いめの深煎りで体を起こしたいし、よく晴れて気温が上がってきた撤収前は、軽い浅煎りでさっぱり締めたい。エスプレッソ濃いめにしてミルクフォームを入れてラテにすることもあります。甘いラテを焚き火の前で飲んでいると、まるで自分が喫茶店の店主になったみたいな、妙に満ち足りた気分になる。たかがコーヒーですけど、選べるという贅沢は思っているより効きます。
お湯を沸かすだけなら焚き火で十分
コーヒーメーカーを持っていかないときは、ドリップバッグを焚き火で沸かしたお湯で淹れています。
焚き火でお湯を沸かすのは時間がかかる。シングルバーナーの方が速いけど、焚き火でゆっくりお湯が沸くのを待つのも悪くない。前の晩の炭がまだ少し残っていれば、そこに細い枝を足して火を育てる。湿った枝はなかなか燃えてくれなくて、息を吹きかけて、煙で目をしばしばさせながら火を起こす。その不器用な時間も含めて、朝の儀式みたいなものだと思っています。やかんの底からだんだん細かい泡が立って、やがてポコポコと音が変わっていくのを眺めているだけで、なんとなく心が落ち着く。
シングルバーナーなら数分で済むことを、焚き火だと十数分かけてやる。効率だけで言えば完全に無駄です。でも、その無駄をわざわざやりに来ているのが釣りキャンプなんだと思う。家にいたらコーヒーなんてボタンひとつで出てくるのに、外でわざわざ手間をかけて飲む——その面倒くささそのものを楽しんでいる。釣りキャンプの朝は時間に余裕があるので、急がなくていい。むしろ、急がなくていい時間を確保するために来ているのかもしれません。火を見ながらお湯が沸くのを待つあいだ、頭の中はほとんど空っぽで、さっきの釣りでバラした魚のことをぼんやり思い返したりしている。その何も生み出さない時間が、平日に磨り減った何かを少しずつ戻してくれる気がします。
釣りの後に飲むコーヒーは格別
同じコーヒーでも、場所と状況が違うと味が変わる。
理屈で言えば、家で淹れるのと豆も湯も同じはずなのに、外で飲むと明らかに美味い。これはもう味覚というより気分の問題なんだと思う。冷えた体、釣りのあとの程よい疲れ、焚き火のパチパチという音、川や海の匂い——そういうものが全部混ざって「美味さ」を底上げしている。コーヒーそのものの味は、たぶん全体の半分くらいしか効いていない。残りの半分は状況が作っている、というのがおれの実感です。
朝マズメで釣り場を歩いて戻ってきて、手が冷たい状態でカップを両手で握って飲む。指先からじわっと温かさが伝わってきて、立ちのぼる湯気を顔で受けると、鼻の奥がふっとゆるむ。最初のひと口を飲んだ瞬間、冷えていた体の真ん中に温かい線が一本通るような感じがする。その温かさと香りが、釣りに来てよかったと思わせてくれます。仮にその日一匹も釣れていなくても、この一杯があるだけで「来た甲斐があった」と思えるんだから、コーヒーの力というのは侮れない。
コーヒーのために早起きしてもいいかもしれない。というか、最近はもう半分くらい本気でそう思っています。
まとめ
釣りキャンプの朝コーヒーは、ただ飲むのと意味が違う。外で飲む、釣りの後に飲む、焚き火の前で飲む、という条件が重なると美味しさが倍になります。
道具にこだわるのもいいし、ドリップバッグでさっと済ませるのもいい。大事なのは「淹れ方の正解」を探すことではなくて、自分がどういう朝を過ごしたいかだと思っています。手間をかけたい日は焚き火でゆっくり、削りたい日はカプセルでさっと。その日の気分に合わせて選べること自体が、釣りキャンプの自由さなんですよね。最初の頃は「ちゃんとしたコーヒーを淹れなきゃ」と気負っていたけど、今は寝ぼけまなこでボタンを押すだけの日があってもいいと思えるようになった。肩の力が抜けたぶん、かえって毎回の一杯が美味しく感じます。
まぁ、これを目的に釣りキャンプに行くのもありだと思っています。釣りが主役で、コーヒーは脇役——そう思っていたのに、気づけば脇役の方が楽しみになっている。順番が逆になっても、楽しけりゃそれでいいんじゃないかと、最近は開き直っています。
もうひとつ気に入っているのが珈琲きゃろっとです。北海道のロースターで、注文を受けてから焙煎して発送してくれる。「どんな豆を選べばいい?」という相談にも丁寧に対応してくれるので、スペシャルティコーヒーを飲み始めたばかりの人にも入りやすい。
よくある質問
Q. キャンプでカプセル式コーヒーメーカーを使うには何が必要ですか?
ポータブル電源が必要です。カプセル式コーヒーメーカーは1300〜1500W前後の消費電力があるので、500Wh以上のポータブル電源があれば1〜2泊のキャンプで問題なく使えます。電源サイトがないキャンプ場でもポータブル電源を持っていけば解決します。
Q. コーヒーメーカーを持っていかない場合のおすすめは何ですか?
ドリップバッグが一番手軽です。かさばらないのでシートバッグにも余裕で入ります。焚き火やシングルバーナーで沸かしたお湯で淹れるだけ。おれは荷物を減らしたいときはドリップバッグ一択にしています。
Q. スペシャルティコーヒーとは普通のコーヒーと何が違いますか?
品質基準が厳格で、農園から直接買い付けた豆を適切に焙煎したものを指します。普通のコーヒーより酸味や甘みなどの個性がはっきりしていて、産地ごとの味の違いが分かるのが特徴です。キャンプで豆にこだわり始めると、場所と味の相乗効果で格段に美味しく感じられます。
Q. 朝マズメとコーヒーの関係は何ですか?
朝マズメは日の出前後の魚が活性化する時間帯なので、4〜6時には釣り場にいる必要があります。釣りを終えてキャンプに戻ってから飲む一杯のコーヒーが、疲れた体に染みる。「釣りの後に飲む」という状況が、同じコーヒーを格段に美味しくしてくれます。
Q. 豆にこだわりたい場合、どうやって選べばいいですか?
産地ごとの味の違いを試せる飲み比べセットから始めるのがおすすめです。Kurasuや珈琲きゃろっとのような専門ロースターは選び方の相談にも乗ってくれます。自分の好みが分かってから定期便に切り替えると失敗が少ないです。